前回の記事では、ヒット商品に頼らず、今ある在庫の中からまだまだ売れる隠れた実力商品を見つける「在庫実行管理(IEM)」に基づく売上増加の手法をご紹介しました。第3回の記事でお伝えしたいことは次の通りです。
- 注文数(販売数)を増やすのは至難の業。でも客単価はコストをかけずに上げられる
- 狙うべき客単価帯を決め、その客単価帯の主力商品を販促
- 客単価を上げても注文は減らない
売上高は、注文数と客単価の掛け算によるものです。ここからは、客単価を上げるための具体的な方法について見ていきましょう。
客単価はシステマチックに向上できる
新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、消費者の支出額は一部の生活必需品や日用品を除いて減少しています。特に「嗜好品」に分類されることもあるアパレル・ファッション商材は動きが鮮明です。
総務省の「家計調査(2020年5月分)」によると、「被服及び履物」への支出は8ヵ月連続で下がり、金額としては、7,780円(物価変動の影響を除いた実質ベース)。前年同月(1万2,428円)と比べると37.3%減っています。消費支出全体は、前年同月比16.2%減だったことを鑑みると、ファッション消費の落ち込みぶりがうかがえます。
新型コロナウイルス感染症の流行が中国中心だった2020年1月は、「家具・家事用品」や「教養娯楽」などの減少幅が大きい状況でした。扱う商材で濃淡はありますが、小売事業者にとって消費マインドの冷え込みは頭を悩ませるところだと思います。
そんな状況でも売上を増やすには、数を売る(注文数を増やす)のではなく、客単価を上げることが肝要です。
多くの企業は、売上増加のためには注文数を増やす必要があると考えていますが、限られた広告宣伝予算、販売促進予算の中で注文数を大幅に増やすのは、非常に難しいことです。たとえば、実店舗なら来店者数は立地で9割がた決まりますし、ECサイトだとPVを増やすには莫大な広告費の投下が必要です。
また、ECサイトの導線やクリック率の改善を図った際、手を加えたのとは別の箇所が悪化してしまうことも少なくありません。PVを増やすためのクーポン配布や送料無料キャンペーンは、売上が増えたとしても利益を圧迫してしまいます。
こうしたリスクを負う改善に対し、客単価は予算をかけず、ある程度システマチックに上げることができます。ここで注意していただきたいのは、客単価向上には商品単価が高い製品が必須ではないということです。
客単価向上の際に着目すべきは、1回の買い物の注文内容です。レシートの内容を想像していただければ、わかりやすいと思います。レシートを見れば、単純に商品単価が高いため客単価が高い注文もあれば、商品単価が低い商品が複数購入されたことで高い客単価を記録した注文もあることがわかるでしょう。