前回の記事では、ECをはじめとした在庫ビジネスに必須の新理論「在庫実行管理(IEM)」の大枠を説明しました。第2回となる当記事の構成は次の通りです。
- 在庫は「よく売れている」「全然売れていない」の二択ではない
- ファジーな「普通に売れている」在庫が売上増加のカギを握る
- 膨大な数のSKUにいかにして対応するか
今回はこの流れに沿って、日々の販促や発注、在庫分析を行う現場でどのようにIEMを実践すれば良いのかを紹介いたします。
「今ある在庫」で売上を作る ヒット商品に頼らない販売の仕方
新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の解除から1ヵ月あまりが経過しましたが、小売業の売上は一部の生活必需品や日用品を除き、平時の水準まで回復するにはまだまだ時間がかかりそうです。
では、皆さんは売上をどのように作っていますか? 一部のヒット商品に頼っていないでしょうか。ヒット商品だけに売上の大部分を頼ると、取り扱う商品数(SKU)を増やさなければならないうえ、欠品を過度に恐れて余分な在庫をもつことが常態化してしまうことは、前回述べた通りです。
しかし、これには仕方がない面もあります。SKUが多岐にわたると、よく売れている商品ばかりに目が行き、販促もそこに偏りがちだからです。
実は在庫というのは、「よく売れていて、売り切れそうな商品」と「全然売れておらず、売り切れなさそうな商品」の二択ではありません。その中間に位置する「普通に売れているが、売り切れなさそうな商品」の3つに大別できるのです。
この普通に売れている商品を、在庫実行管理(IEM)では「過剰在庫」と呼んでいます。過剰在庫の販促は大半の企業が手薄なため、販促次第でまだまだ売上を伸ばすことができる隠れた人気商品もここに含まれています。この過剰在庫にメスを入れるだけで「今ある在庫」で売上を増やし、結果として在庫を削減することが可能になります。