EC事業者にとってDXは高いハードルではない
ECサイトのAI活用でもっとも知られるのが、Amazonの「レコメンド機能」です。ユーザーの購買・参照・検索履歴から似た人を探し、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と表示する機能です。この機能によってAmazon.comの買い上げ点数がアップし、売上が飛躍的に向上しました。
その後Amazonの脅威が大手小売企業などを破綻に追い込んだことからもわかる通り、企業が将来に渡って成長するには、デジタル技術を活用して事業を革新する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組む必要があります。しかし、多くの企業はDXの必要性を理解していながらも、いまだ実現できていません。
他業界に比べ、EC業界はデジタルネイティブな企業が多いです。ECサイトが扱うデータはすでにデジタル化されているため、DXする必要はありません。EC事業者はデータドリブンの思考が浸透しているので、KPIに基づくPOCの検証もしやすいというメリットがあります。
そのためEC業界にはAIの活用方法が多いです。Amazonの創設者のひとりであるジェフ・ベゾス氏は、株主に宛てた手紙のなかでこう述べています。
「私たちは何年もの間AIに取り組んできました。宅配ドローンやAmazon GO、Alexaなど大きなトピックスもありますが、AIの功績の多くは表面には出てきません。予測分析、検索ランキング、レコメンデーション、棚割、不正検出、翻訳など、目に見えにくいものですが、大きなインパクトを生み出しました」
ジェフ・ベゾス氏が言っているのは、AIには、表に出てくる「目立つAI」と陰で支える「目立たないAI」があるということです。ECサイトの場合、主に目立たないAIが活躍する領域であると言えます。予測分析、検索ランキング、レコメンド、翻訳などでAIを活用すれば、ECサイトにおいてグローバルな市場の広がりや買い上げ点数の向上、適正在庫の保持など、さまざまな効果が見込めます。
しかし、ECサイトにはどのようなAIが活用されているのか、外部からは分かりにくいものです。そこで、ZOZOTechとユニクロの事例から活用するヒントを探っていきたいと思います。