香りを伝えられないECの壁
イギリス発の自然派化粧品ブランド、ザ・ボディショップ。現在の売上構成比は実店舗が9割、EC1割。経済産業省の発表によると医薬品と化粧品のEC化率は5.8%なので、国内水準よりかは高いといえる。しかし斉藤さん個人としては、EC化率をさほど重要視しておらず、あくまでユーザーにとって買い物に対する自由度の目安として捉えているという。
水準より高いとは言え、なぜEC化率が1割程度に留まっているのかといえば、ユーザーの中で「店舗に行って買う」という先入観があるからだ。そこには店舗で購入しなくてはいけない理由が存在する。
「その理由を解決することによって、お客様がECで買えるようになる。それがお客様の買い物の自由度が上がることにつながり、結果的にEC化率も上がると考えています」(斉藤氏)
ECは人間の五感を伝えることがまだまだ苦手だ。特に化粧品に関しては、嗅覚である香りと触覚であるテクスチャーの2点を伝えることができていない。これがユーザーにとって店舗でないと購入できない理由なのだ。
ザ・ボディショップにはユーザーレビューが約3万件蓄積しており、それを1件1件分析した結果、ザ・ボディショップのユーザーは評価をする際に香りとの相性を重要視するという傾向が見えてきた。斉藤さんはその中でも非常に印象的だった2件を紹介した。
ひとつは、「オンラインでの購入は香りの確認ができないので難しいと痛感しました」というもの。そしてもうひとつは、「思っていた香りと違い、残念です。ネットでは、ピンググレープフルーツだけにします」というものだ。
「おそらくこれらのレビューをしたお客様に関しては、今後新しい香りが出てもECで買うことはないでしょう。お客様の声がこうして表に出ることは非常に少ないので、件数としては3万件のうちの2件でも、実際にはこの裏に何百件、何千件という数があるかもしれません。このレビューには非常に危機感を覚えました」(斉藤氏)