ECの隠れた大きなマーケット、それはBtoB市場
皆さんご承知のとおり、ECとはエレクトロニックコマース=電子“商取引”の略称です。リアルのご商売も含めて「商取引」の中で最大の規模を誇るのは、当然ながら「BtoB=企業間取引」なのですが、ECにおいてもBtoBはかなりの市場規模があります。いや、表現が適切ではないかもしれません。実は、今現在をもって国内EC市場のほとんどを占めるのはBtoB市場なのです。
経産省のレポートを見ると、2015年度の消費者向けECは13.7兆円に対し、BtoB市場の規模は狭義で203兆円、広義では288兆円に及んでいます(注:広義のBtoB市場には昔で言うイントラネットのごとく既存取引先だけが発注できるクローズドのネットワークなどを含みます)。金額を見ればおわかりのとおり、日本のEC全体の「ほとんど」=95%以上がBtoB市場となっています。
考えてみれば、ECという言葉が一般に広まるかなり昔から、“電算機“を使った商取引が存在していました。ちなみに、今現在も銀行間の決済に使われている事務系のプログラミング言語COBOLの登場は1959年とのことですが、すでにこの時代から大手企業などでは電子商取引が始まっていたのです。ECにおいてBtoCの歴史は20年経ったかどうかというところですが、BtoBは短く見ても40~50年の歴史があるということになります。
これだけ歴史のある大きなマーケットでありながら、ECのBtoB市場について語られることがほとんどないのは残念な限りです。昔の記憶をたどれば、初めて筆者がECに接したのは、若手サラリーマン時代のBtoB取引でした。今では筆者の専門分野のひとつになっていますが、この時代にひとりのユーザーとしてたいへん幅広い業種の“電子取引”を経験させていただいたからこそだと思っています。
一般的に見て、BtoBの取引はBtoCに比べて1回の受注金額がはるかに大きいものです。また、商品の仕入や部材の調達などを主とする取引が中心なので、リピート率は非常に高いものであることが期待できます。新規に獲得した顧客の価値をLTVという面から考えれば、個人の消費者とは比べものにならないぐらいの金額になるのも当然です。ちなみに“法人“には物理的な寿命はありませんので、仮に数十年続くとすればLTVは強烈な金額になるはずです。
従って、新規顧客を獲得できる可能性が充分に見込めるのであれば、サイトの構築にしても集客媒体にしても「かなりの金額の投資」をしても「採算が合う」ということになります。まずはここに注目していただきたいと思います。