ITリテラシーが高くないユーザーをケアするとCVRはアップする!
CVRアップについて考えるうえで、「大前提としておさえてほしいことがふたつある」と笹本さんは言う。
「まずCVRという言葉について、アルファベット3文字で表現できることが便利なので私も使っていますが、コンバージョン・レートと表現するのは、本当はあまり好きではありません。サイトにいらしたお客様がどれだけ購入してくださったかの割合をコンバージョンと表現している時点で、心構えとして良くないなと思っています。本来の意味では、『購買率』と表現するべきでしょう。
もうひとつは、CVRはECサイトのクオリティを示す数値であるということ。100人の来訪者のうち、ひとりが購入したサイトと、ふたりが購入したサイトを比較したら、後者のサイトのほうが高いことになりますよね。ECサイトのクオリティを高めるという意味では、CVRは追うべきKPIだと言えますが、その本質を知らずに数字だけを追いかけても、CVRは0.00何%程度しか動かないと思います」
では、ECサイトのクオリティはどのように高めればいいのか。笹本さんはこれまで、さまざまな切り口からアドバイスをコラムに綴ってきてくれた。具体的には、色味やフォントなどサイトデザインや、コンバージョンキーワード、スマホ時代のPCユーザーの重要性などである。
「テレビのテロップに学ぶ、CVRを上げるサイトデザイン「文字の見せかたのコツ」」
- 瞬時に離脱するユーザーのほとんどが「見るモード」つまり、読んできちんと理解するということをせずに「感性系の判断」で離脱している
- 「見ているだけで読んでいない」という言わば「超ウルトラ ナナメ読み状態」のユーザーに対して「効果的な訴求」ができない限り、直帰率の大幅な向上は見込めない
- ECサイトの根底にかかわるさまざまな訴求項目を、瞬時に、直感的に、伝える必要がある
「色の違いで売上4割アップも!ECサイトのデザインをロジカルに詰める「To Narrow」手法とは」
- 第一感のサイトイメージに違和感が生じるとサイト内のコピーや商品に対して疑念や不安が生じる
- ザッピング段階でのユーザーの直観的な判断に対処しない限り、ナビゲーションやコピーなどを練り上げたとしても直帰率の軽減は難しい
- 彩度や明度の高い色(真っ赤や真っ黄色など)は敷居が低くCVRは期待できるものの、ショップや商品のイメージは低価格&チープになりやすい
「Instagramのタグづけにも使える!ECならではの「コンバージョンキーワード」の探しかた」
- サポートツールの提案のまま「メインキーワード+サブキーワード」の2語でSEMを行っている
- 「モノの不具合」や「不快」や「緊急性」を示すサブキーワードは、CVKWの中でも相当に購買率が高くなる傾向に
- 検索数は10分の1でも、購買率=本気度が10倍であればキーワードの市場規模は同じ
「今だからこそ注目したい「あえてPC」ユーザー CVRアップに再来訪へのケアが重要なワケ」
- 商品の比較検討/あるいはどのショップで買うかの比較のために表示画面が広い「=一覧性の度合が高い」PCをあえて使った
- あえてPCでアクセスして来たユーザーは、数は少なくてもポテンシャルが高いユーザーである可能性が高い
- コンバージョン=クロージングの手前のステップには必ずと言って良いほど(もちろん同一デバイスの場合も含めて)「再来訪」があるはず
いずれも共通するのは、徹底して顧客視点に立つこと。それも、ITリテラシーがそれほど高くないユーザーを大事にするべきだと笹本さんは言う。その視点を忘れないため、笹本さんはあえてハイスペックではないパソコンを用うなど、ECのプロではない環境を作り、数々のECサイトのUI・UXをチェックし続け、成果につなげてきた。
「iPhoneの最新機種を使い、Chromeブラウザをわざわざダウンロードして使っているユーザーは、こちらがケアしなくとも目的にたどりついていただけます。消費者全体で見ればその人たちの割合は少ないので、CVR等へのインパクトはそれほど大きくありません。一方で、シニアなどそれほどリテラシーが高くない方は、一度気に入っていただければ、他に浮気せず、そのサイトをずっと使い続けてくださる。提案すれば、そのお店が専門に扱っているわけではない商品もついで買いしてくださるようになります。私の経験でも、後者のケアを厚くしたほうが、結果的にCVRもEC化率も上がるんですよね」