配送料金見直しなど、物流に世間が注目
1つ変えればすべて解決するわけではない
物流に関する話題がクローズアップされた、2017年の春。物流のプロが見る、再配達防止策とは。
「どこか1つのポイントを変えれば解決するという問題でなく、そもそも、流れているモノの絶対量が圧倒的に増えていることが原因です。ヤマト運輸さんも、数が増えたからこその、これまで割してきた大口顧客の料金を元に戻そうという取り組みでしょう。
EC事業者ができる努力としては、たとえば、2つ注文したお客様がいたとして、1つ欠品していたから1つ先に出てしまったら、荷物は2つに分かれますよね。でも、欠品が補充されるのを待てれば、1つの梱包で済む。Amazonはやらないでしょうが、そこまで速配が求められない事業者ならやるべきです。そのためには、ECのフロントシステムの改善と、倉庫と連携して協調していくという姿勢が必要です」
ECカートで日時指定が可能なサービスは少なくないが、地域や商品によっては日時指定ができないものもある。また、受注管理ソフトも業種によっては人の負担が軽減されない場合も多く、ITでの解決はなかなか難しい。
「ITの活用なら、AmazonのPrime Nowのような『あと何分で届きます』といったことがわかるアプリが有効だと思います。必ずしも早く届く必要はなく、いつ届くか正確にわかることのほうが、受け取る側にもメリットがありますよね」
再配達防止策というと、再配達有料化などのアイデアも出るが、それにも栗田さんは首をかしげる。
「指定した時間に荷物が来ない、受け取り側は宅配ボックスに入れてほしいと思っているのに、入れてもらえないといったことが起きています。『着払いの場合、あの人なら事前に電話をくれるのに』といったように、配達員ごとにクオリティも異なる。まずは届ける側の一定のクオリティを担保した上での、有料化だと思います」
ちなみに話題の宅配ボックスについては、伝票に「不在の場合は宅配ボックス可」といったことが書かれていなければ、多くの配達員は持ち帰りがちとのこと。これは、配送の前の段階でEC事業者が、配送業者と消費者のことを慮って、あらかじめ確かめる仕組みを作らなければならない。再配達防止の議論の問題点は、受け取る側と配送する側、販売する側の課題と対策がごちゃまぜに語られていることが、出口が見えない議論の始まりなのだ。
「配達しやすくする仕組みと、受け取りやすくする仕組みは根本的に異なるんです」