社内で飽きられる前に一気に事業を大きくする
じっくり準備してからプロジェクトを進めようとすると、いつまで経っても目立った成果が上げられず、経営層に忘れられたり、飽きられたりします。そのため採算は別として、私はできるだけ早く、とにかく事業規模を大きくすることに注力していました。売上や訪問者数、取扱商品数、コンテンツ数など、どんな数字でもです。
そうすると、小規模のフェーズでは見えなかった様々な問題が顕在化します。企業にとって無視できない事業規模になると、協力せざるを得ない状況になる、かつ正しい組織構造で進められるようになります。
私の場合は、計画を緻密に立てるよりもスピード重視でまずは粗くプロジェクトを進めます。そのため、他部署からは「炎上」しているように見えるかもしれません。それでも、関係者を巻き込みながら問題を一気に片付けるのがコツです。私はあえて「炎上商法」といいます。参考になるかは別ですが、二つの実例で詳しく解説しましょう。
人気商品をEC部門にも回してもらうには
既存事業の商品数が圧倒的に多い企業では、どれを優先的にECサイトで販売するか明確に決められていないケースが少なくありません。そのため、ECサイトの体裁を整えるために「どんな商品でもEC部門に回してほしい」とMD部門に頼んだことがありました。すると、不良在庫対策としてECサイトで売れる可能性が低い商品が入庫されます。
在庫金額(ネガティブな爪痕)が大きくなると、既存事業とEC事業の両方を管理するレイヤーの社員が、原因を追及し始めるはずです。当然、EC事業の担当者も指摘はされますが、大きな原因がMD部門にもあると判明します。その結果、MD部門にも改善指示が出され、膨大な在庫の返品や移動が行われます。その際に、以前よりも売れる可能性が高い商品へと入れ替えることが可能です。
あえて面倒な仕組みを作る
ある企業では、基本的に全商品をECサイトで販売すると決定していたにもかかわらず、実際はMD部門の判断で取り扱う商品を選んで登録していました。それにより人気商品がECサイトなどで販売できず、顧客満足度が低下していました。
そこで、経営層を巻き込み、あえてECサイトで販売できない商品は一つひとつ社長承認を取るという仕組みにしました。毎回社長に許可を取るのは非常に面倒な作業といえるため、MD部門もすべての商品をECサイトで販売する判断をしました。
ただし、こうした進め方は各部門の担当者や組織への負担も大きいため、活用する案件を見極めなければなりません。
また、今でもたまにあるのが顧客や売上の取った取られた問題です。これも、他部署から協力が得られない要因の一つです。
ECサイトを頻繁に利用する顧客が増えると、実店舗を含めた総購入金額も上がるはずですが、実店舗側の売上が下がることがあります。単純に実店舗の売上のみを基準にすると、その担当者や責任者は評価が下がる可能性があるのです。そんな中で、実店舗の担当者や責任者に対して「顧客にECサイトを紹介してほしい」「EC部門にも残在庫を回してほしい」と頼むのは酷です。
私が過去に所属していた企業では、EC売上は「みなし」で集計するだけで、実店舗や既存ビジネスの販売部門へ売上として計上していました。これは、私の経験から必須の対応といえます。他部署がEC事業へ協力しやすい環境を用意することはもちろん、EC構想/コンセプトで「オムニチャネル」「OMO」を掲げるのなら、その徹底のために評価制度を整備するべきでしょう。