刺さる縦型動画の共通点はスピード感と臨場感
TikTokやInstagramリール、YouTubeショートなど、私たちの生活に縦型動画がより一層なじみつつある2023年。同年10月からは、GoogleでもYouTubeショートへの露出に対応した「デマンド ジェネレーション キャンペーン」が開始するなど、プラットフォーム側も縦型動画を使ったマネタイズと広告主への利便性向上に積極的だ。
「実際、当社にも『縦型動画を作りたい』といった問い合わせは増加傾向にあり、実際に制作・公開して新たな顧客層の開拓や認知拡大など一定の成果につながっている事例も出てきています。この数年で広がった動画フォーマットということもあり、好んで閲覧する視聴者は若年層も多く、今後はより外せない訴求パターンとして定着していくでしょう」
日本では、TikTokやYouTubeショートよりも先に、Instagramストーリーズで縦型動画を経験したユーザーも多いだろう。テレビが主軸であった時代は、その規定フォーマットから「動画=横型」と固定概念が植え付けられ、携帯電話など縦画面のデバイスが普及してもその形は長年変わらずにいた。ではなぜ今、縦型動画が広がっているのだろうか。
「一番は、短尺で素早く情報発信・取得ができる手軽さではないでしょうか。縦型動画であれば、わざわざスマートフォンの向きを変えなくても、友人・知人と連絡を取っている合間や、SNSでの情報収集の延長線上で動画視聴が可能です。
『タイパ(タイムパフォーマンス)』という言葉が度々出てくることからも、視聴者の時間の使い方や情報収集の方法は着実に変わり続けています。『ながら見』『合間見』のような形で触れられる場所に情報を置く、ユーザーの行動や需要に適したフォーマットで情報を届ける。こうしたことをしなければ、世の中から置いていかれてしまいます」
縦型動画は、主な視聴媒体のスマートフォンで撮影し、そのままアップロードできる点も特徴だ。以前は横型で撮影した動画をトリミングして縦型にするなど、編集工程でフォーマットを合わせて制作工数を削減していたが、縦型動画コンテンツが増え競争が激化する今は、撮影現場も変化しているという。
「撮影時にカメラを2台用意して縦横2パターンの画角を撮影したり、2パターンの動画を制作することを前提とした撮影スケジュールを組んだりと、縦型動画ありきの企画も増えています。縦型動画は映像としてのクオリティーの高さよりも臨場感や等身大さが重視される側面もあり、テロップをつけるなどの軽微な編集以外は『ほぼ撮ってだしの状態で』といったオーダーもありますね」
古くからCM出稿を行ってきた企業の場合は、こうしたライトなものを世にだして良いものかと不安に思うケースもあるだろう。しかし、コンテンツがあふれる中で量と質のバランスに変化が生じているのも事実だ。「出会いたい顧客が、どんな情報をどう受け止めているか」といった視点を持ちながら接点創出を図ることをおすすめしたい。