2024年8月2日、経済産業省は特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律第6条第1項に基づき、アマゾンジャパン、Apple Inc.及び iTunesに対して、提供条件などの開示に関する勧告を行った。
アマゾンジャパン
アマゾンジャパンが提供する総合物販オンラインモールであるAmazon.co.jpで、出品者が商品を出品するにあたって、販売された商品ごとに販売手数料が課されている。その手数料率は、商品のカテゴリーごとに定められている(以下、「手数料カテゴリー」という)。この点で、次のことが指摘される。
適用される手数料カテゴリーに関する開示
(1)出品者が出品に際して選択する「商品タイプ」や「ブラウズノード」(以下、「商品カテゴリー」という)と手数料カテゴリーが異なり得ることが開示されていなかったこと。また、(2)アマゾンジャパンが手数料カテゴリーの決定主体であることが明確に開示されているとは認められないこと。(3)商品例が当該手数料カテゴリーに属するという判断基準が開示されていないこと。
なお、2024年5月14日に、同社はヘルプページ・ポリシーを新設・更新し、商品カテゴリーと手数料カテゴリーが一致する場合とそうでない場合がある旨を記載した。
個々の出品者の販売商品の販売手数料変更に関する事前通知
プッシュ通知が行われておらず、少なくとも変更の理由が開示されていなかったこと。
アマゾンジャパンからは、手数料カテゴリーの新たな自動モニタリングシステムを運用開始し、適用される手数料カテゴリーの変更が必要と判断した場合、90日前の事前通知の上、分類しなおす旨の報告があったという。この点、当該通知文において、変更の内容と理由が、出品者の理解と予測可能性の観点から十分に記載されていることが必要であり、経済産業省は履行の確保及び報告を求めている。
手数料カテゴリー自体の変更に関する事前通知
少なくとも2023年3月31日から2024年5月7日の間の2回の変更は事前開示が行われていなかったこと。これを踏まえ、経済産業省は、法第5条第1項(提供条件の開示の方法等)及び同条第4項第2号(提供条件の変更の事前開示)等を遵守していないため、勧告が必要と判断した。
Apple Inc.及びiTunes(以下、「Apple」という)
法第5条第1項及び省令第5条では、提供条件の開示の方法について、開示する提供条件が日本語で作成されていないものであるときは、日本語の翻訳文を同時に付すことを求める。その一方、やむを得ず翻訳文を同時に付せない場合は、開示の時に期限を明示して、当該期限までに翻訳文を付せば足りるとされている。
Appleは、2021年3月から2023年12月までの間、一部の提供条件の開示時に、翻訳文を同時に付さなかったことに加えて、期限の明示を行わなかった。その後、2024年1月以降は、商品等提供利用者向けの通知に、翻訳文は1ヵ月を期限に自社サイト上で提供する旨を含める運用を開始したが、当該期限を経過しても翻訳文を付さなかった事例が生じた。これらを踏まえ、経済産業省は法第5条第1項の遵守状況に関して勧告が必要と判断した。
勧告の内容
それぞれに対する勧告の主な内容は次のとおり。
アマゾンジャパン
- 販売手数料に関する提供条件の内容を明確かつ平易な表現で開示すること
- 手数料カテゴリー自体の変更及び個々の出品者の同種商品に適用される手数料カテゴリーを変更する場合には、事前に内容及び理由を開示すること
- 代表社員の職務執行者において、違反事実や上述の措置について確認すること
- 上述の措置について、自社の関係役員及び従業員や出品者に周知徹底すること
- 透明化法に違反することがないよう、法令遵守体制の整備のために必要な措置を講ずること
- 上記措置について、代表社員の職務執行者の確認の上で、勧告から1年の間、3ヵ月ごとに、経済産業省に対し履行状況を報告すること
Apple
- 法第5条第1項の規定の遵守に関する社内管理体制の整備のために必要な措置を講ずること
- 当該措置を自社の関係する従業員に周知徹底すること
- 上記措置について、Apple Inc.の適切な管理職を含む決裁の上で実施し、勧告から3ヵ月以内に、経済産業省に対し、日本語の文書で報告すること