矢野経済研究所は、国内の化粧品受託製造市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
市場概況
2023年度の化粧品受託製造市場(事業者売上高ベース)は、前年度比104.2%の3,456億円となった。
2023年度は新型コロナウイルスが5類に移行したことを背景にマスク着用の機会減少にともなう化粧品需要の回復が期待されたが、店頭販売の回復は想定より鈍かった。2023年度の受託案件数は総じて緩やかな動きで推移することとなったという。
一方、原材料や容器・包装資材、光熱費、物流人件費 などの高騰を受け、化粧品受託製造企業はクライアント(化粧品ブランドメーカーや異業種参入企業)に対して受託価格の改訂交渉を積極的におこなう動きが活発化。価格転嫁分は化粧品受託製造企業の売上高に上乗せされ、化粧品受託製造市場規模は前年度を上回る結果となった。
注目トピック
韓国製化粧品の輸入量増加による日本製化粧品の生産量への影響
韓国製化粧品の輸入が急増しており、財務省の貿易統計によると、韓国から日本への化粧品輸入金額は、2022年には前年比124.9%の775億2,100万円となった。メインターゲットである日本の若年層によるECサイトでの購入が多く、購入チャネルはECサイトが中心になっている。一般の店頭での購入比率はまだ低いものの、近年ではバラエティショップやディスカウントストアのほか、ドラッグストアやコンビニエンスストアでも韓国製化粧品コーナーが設けられるなど、店頭での取扱量も増加傾向にある。このトレンドは今後も続く可能性が高く、日本製化粧品の売り場での取扱量や、化粧品受託製造市場への影響が懸念される。
将来展望
2024年度の市場規模は、前年度比103.3%の3,571億円と予測される。化粧品受託製造企業は2023年末から2024年初頭にかけ、新規やリピートオーダーを活発に受注しており、本格的な需要回復の足掛かりになるものと期待されている。特に、異業種参入企業などによる中・高価格帯のヘアケア・スキンケア化粧品ブランドのセールスが好調に推移しており、需要回復が見込まれている。
調査概要
- 調査期間:2024年4月~6月
- 調査対象:化粧品受託製造・容器・原料参入企業、化粧品メーカーその他関連企業・関連団体など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話などによるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用