矢野経済研究所は、国内のコールセンターサービス市場およびコンタクトセンターソリューション市場を調査し、サービス別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2021年度の国内コールセンターサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比8.0%増の1兆1,259億円。前年度から継続しているコロナ禍を背景としたスポット案件(公共分野/官公庁案件)の発生が市場規模を大きく押し上げる格好となった。また、民間企業においても労働力不足を背景としたコールセンターのアウトソーシングニーズは引き続き拡大するとともに、コロナ禍で、非対面/非接触コミュニケーションチャネルとして重要視されるようになったことも市場拡大に寄与した。
2021年度の国内コンタクトセンターソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比1.9%増の4,271億円。同年度も、コロナ禍で経済活動が制限されたなかであったが、市場全体としては順調に伸長した。市場拡大要因のひとつには、クラウド型コンタクトセンターサービスが急拡大したことが挙げられる。2021年度は従来からのクラウド型コンタクトセンター専業ベンダーに加え、主要なプラットフォームベンダーもクラウド型サービスに注力し始めた。
注目トピック
非接触窓口としてのコールセンター/コンタクトセンター
コロナ禍を契機にデジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる時代となり、加えて顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)向上を目指す企業が増加し、顧客の生の声を拾うことができるとしてコールセンター/コンタクトセンターの重要性が増している。
コールセンター/コンタクトセンターの役割がコスト削減(コストセンター)から顧客との重要なタッチポイント(プロフィットセンター)へと移行しつつある。
将来展望
コールセンターサービス市場の2022年度上期までは官公庁関連のスポット案件が続いているものの、下期は落ち着くものとみられ、2023年度以降の市場規模は、揺り戻しが発生すると予測する。
コンタクトセンターソリューション市場は、2022年度以降に関してもコロナ禍で、企業が非接触顧客窓口であるコンタクトセンターの重要性を強く認識しているため、コンタクトセンターに対する投資は引き続き堅調に実行されていくと予測する。
コロナ禍でニーズの強いクラウド型コンタクトセンター比率の高まりは、単価低下を招くが、これまで利用の少なかった中小企業への普及が期待されることや、ウェブチャネルとコールセンターを融合させた新たな顧客サポート体制の強化を目的としたシステム整備も進んでいくと想定される。
非対面における顧客との接点としてコンタクトセンターに求められる役割が大きくなるとみられ、今後も堅調に推移していくものと予測する。
調査概要
- 調査期間:2022年7月~10月
- 調査対象:コールセンターサービス提供事業者、コンタクトセンターソリューション提供事業者
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・eメールによる取材、ならびに文献調査併用