矢野経済研究所は、国内の宅配水市場およびその周辺市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2021年度の宅配水市場規模は末端金額(エンドユーザ販売金額)ベースで前年度比104.8%の1,616億円の見込みである。2021年度は引き続きコロナ禍の影響があり、前年度と同様に法人向けは低調となり、個人向けは1人当たりの水の使用量は秋頃まで多い状況となっていたが、徐々に落ち着いてきている。
個人向けの新規顧客獲得は、まん延防止等重点措置などの適用期間はショッピングモール側からビラ配りや試飲の自粛を求められることもあるため、デモ販売が行いにくい状況であった。しかし、一部の上位企業では営業体制の強化や、販売データを管理する社内システムの改善により効率よく販売できており、新規獲得は着実に進んでいる。
注目トピック
新規参入が活発化するPOU・給水型ウォーターサーバー市場
近年、宅配水事業者は水道直結型(POU:Point of Use)や給水(浄水器一体)型のウォーターサーバー事業に関心を示しており、それらのウォーターサーバーの取り扱いを始めた企業や今後、品揃えのひとつとして検討する企業も増えてきている。
宅配水事業者がPOU事業に参入している例としては、ダイオーズが「Purest」ブランドを展開し、POUと給水型のウォーターサーバーを取り扱っている。プレミアムウォーターHDはアンドウォーター(後のライフセレクト)を子会社とし、同社のウォーターサーバー事業を分割承継したことでPOUと給水型のウォーターサーバーのサービスを開始した。また、KiralaもPOU事業に参入している。
一方、給水型のウォーターサーバー事業への参入は、コスモライフが「ハミングウォーター」の販売を、富士山の銘水は「every frecious mini」の取り扱いを、ナックは「クリクラfeel free」を取り扱い開始している。このように、宅配水事業者による、宅配水とPOU、給水型のウォーターサーバーとの両立を図る動きは増加している。
将来展望
宅配水市場では新規顧客の獲得ペースの鈍化や配送料金をはじめとする各種コストの上昇、競合する商材であるPOUや給水型のウォーターサーバー市場の近年の急激な成長など、市場を取り巻く環境は厳しさを増してきており、市場成長率は鈍化傾向にある。
調査概要
- 調査期間:2021年12月~2022年4月
- 調査対象:宅配水製造企業や給水型ウォーターサーバー・水道直結型ウォーターサーバー(POU)を取り扱っている企業
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用