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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

インバウンドビジネス最前線

帰国後、陶芸体験で自分が作った益子焼が届くのはスペシャルな体験 益子町の女将にインバウンド対策を聞く

 年間3,000万人以上の外国人が日本を訪れているが、そのほとんどが東京、京都、大阪、高山、北海道などの人気エリアに集中的している。そんな状況を打ち破るべく、訪日外国人客獲得に対策を打ち始めている地域がある。益子焼で有名な栃木県益子町もそのひとつだ。益子町で中心的な宿的存在でもある、益子舘の女将・高橋美江さんにインバウンド対策の話を聞いた。

陶芸家の町・益子町のインバウンド対策を、益子舘の女将に聞く

――現状の益子町を訪れる、訪日観光客の数はどれくらいで、どのようなインバウンド対策を行っていますか?

高橋(益子舘) 正直なところまだまだ少ない状況で、年間1,000人強くらいでしょうか。アジア系よりは欧米系の個人客が多いです。海外プロモーションについても、ようやく観光協会などにもインバウンド委員会を作り、さらに強化していこうとしているところです。

益子町には、濱田庄司先生と島岡達三先生という陶芸家の人間国宝がおふたりいらっしゃいます。濱田庄司先生が、今から約100年前に自分の焼き物の技術を学ぶためにイギリスのロンドンから車で約5時間のセント・アイヴスに行ったんです。そのつながりから、今でも交流が続いています。

濱田先生の作品を見るために、海外より陶芸家アーティストの皆様が益子までいらっしゃいます。そういう方々のために、町では国際工芸交流舘という施設を建てました。その交流舘に国内外で活躍するアーティストさんを受け入れて、滞在制作や講演会の開催、最終的にはギャラリーにて展示販売という取り組みを行っております。

益子町には、陶芸家をはじめ、ものづくりをする方々がたくさんいます。その方たちはInstagramなどのSNSで海外の皆様とのつながりを持ち、独自に集客を行っています。正直なところ、宿の私たちよりも海外へのアピールは積極的に行っているように感じております。

(写真左)女将・高橋美江。(写真右3名)「海外からのインターシップも進めています」(髙橋)

――益子舘ではどんなインバウンド対策を行っていますか?

益子舘では4年前から海外OTA登録、公式サイトの多言語化を行いました。ただ、これだけでは結果は出ませんので、益子舘が得意とするface to faceの対応を海外のお客様に行っています。フロント担当で英語ができるスタッフは、宿泊前の事前フォローをメールで行い、滞在中も出来る限りお客様に密着して対応させていただいております。 その結果、毎年のように訪れていただけるリピーター様も増えていています。

今朝、私は中国からのお客様と1時間以上お話をさせていただきました。その影響なのかどうかわかりませんが、お土産コーナーにある益子焼などをたくさん購入してくださり、国際発送をしてきたところです。そして、東京在住の中国の方とは、今度餃子を食べにいく約束までしてしまって(笑)。 地道に思われるかもしれませんが、実は一番大切なプロモーションではないかと思っておりま す。

――インバウンドへのお取り組みで、これぞというトピックスがあれば教えてください。

以前、ハラール食のインド人の方が宿泊されたときのことです。工業団地がある、隣の真岡市にビジネス目的でお越しになり、その際に益子舘に滞在していただけるのです。1日目の夕食時、日本食がまったく駄目でm自分で持ってきたカレーを温めてほしいと言われたんです。正直、満足がいくものが出せずに恥ずかしくて恥ずかしくて。やむなくその日は温めてご提供させていただきましたが、2日目はこのようなことがないようにしようと一生懸命、ハラールの方が喜ぶ食事をインターネットで調べました

そこでわかったのは、鶏の唐揚げや天ぷら、お鍋といったものは大丈夫なようなんです。加えて、フルーツはとくにお好みのようでした。そういった情報をもとに板長に相談し、皆で献立を作りました。2日目の夜、「夕食を準備してお待ち申し上げております」とお伝えしたところ、「絶対に帰ってきます」と約束してくださいました。その料理を作り、待っていたんですけれど……。

午後8時過ぎても帰ってこないんですね。一緒に同行している日本人の方もいますし、食事は済まされちゃったかなと気落ちしていたところ、駐車場に車が入ってきて。その時は本当にうれしかったですね。そのインドのお客様が「帰ってくるって約束したから」っておっしゃったんです。お腹もすいてるのに、わざわざ帰ってきてくださったことに本当に感動しました。

そして唐揚げや天ぷら、お鍋をご提供し、「ありがとう! グッド!」ってリアクションしてくださったときは、スタッフ一同大喜びしました。やっぱり1回、1回勉強ですね。こちらが一生懸命おもてなしをすれば、言葉がわからなくても伝わるんだと実感しました。

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この記事の著者

浦澤 修(ウラサワ オサム)

ライター・編集/株式会社オージャパン 代表取締役 浦澤修

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/7071 2019/10/10 07:00

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