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課題2:ブランディング戦略の立案
前編で説明したように、Minimalの製法はBean to Barという新しいスタイルです。ブランド立ち上げ当初から、ものづくりの質を追求してきました。その次に注力した点が、“ブランディング”です。
私は、ブランドを考える観点として、「誰に:ターゲット」「何を:コンセプト」「どのように:手法方法」というシンプルなフレームを使っています。
誰に:ターゲット
実は、詳細なペルソナの設定はしていません。ペルソナの設定自体は大事だと思いますが、私が具体的にしたのは、20~40代の男女をメインターゲットと設定したくらいです。
特徴的な点でいうと、通常チョコレートブランドは女性のお客様が9割といわれていますが、Minimalは最初から明確に男性もターゲットとしていたことです。実際の購買比率でも、4割弱が男性のお客様です。コンセプトとの相性や、チョコレートブランドとしての市場性も考慮しています。
そこからは、自分達とその周りにいる友人をイメージし、「彼ら彼女らが欲しいと思えるブランドか」をコンセプトと行き来しながら、ターゲットを固めていきました。
何を:コンセプト
コンセプトは「クラフトなものづくりで嗜好品としてのチョコレート体験を提供する」と設定しました。
「クラフトなものづくり」とは、「クラフトビールやスペシャルティコーヒーさながらに、クラフトマンシップ溢れる世界観と手仕事で、従来のチョコレートの常識になかった新しいフレーバーを含め、世の中への新しい価値とクオリティの提供を重視する」ということです。
「嗜好品としてのチョコレート体験」は、「チョコレートの素材であるカカオ豆のクオリティにこだわり、その味わいや香りを最大限に表現して、素材そのものの良さや、その周辺の情報・体験まで楽しめる設計にして提供する」ということです。
どのように:手法方法
Bean to Bar製法がメインですが、これを内包したより広義な手法としてD2Cを選びました(10年前にはまだD2Cという言葉は普及していなかったですが)。10年前の考え方でいえば製造小売ですが、その前後にある研究開発とブランド開発まで含めた、一気通貫したブランド運営モデルを採用しました。
川上~川下までのビジネスプロセスを管理するのはコストが高く、ベンチャー企業としては資金面のリスクも含めて難易度が高いことでした。しかし、長く続けていくのに、研究開発機能と直接的な顧客接点の2つは外せないと考えたのです。