生産工場がある国では積極的にローカライズ コクヨのグローバル展開
キャンパスノートを代表とする文房具などの製造・販売や、オフィス空間の提案を展開するコクヨ。1905年に創業し、100年以上の歴史をもつ同社のステーショナリー事業について、齋場氏は「幅広い商品ラインアップと流通網を有し、どなたにも使いやすさを感じていただける商品力が、日本国内での強み」だと説明した。
しかし、そんな強みをもつ事業も海外に目を向けると異なる側面が見える。コクヨの海外展開は、1996年にタイと香港に現地法人を設立したところから始まっているが、本格的な商品展開を開始したのは、2003年の中国市場参入から。その後もアジアを拠点に海外進出を進め、現在では中国・インド・ベトナム・タイの4ヵ国に生産工場を、中国・インド・ベトナムの3ヵ国に販売拠点を有している。
「海外拠点を設けている国では、日本にある商品を単にグローバル展開するのではなく、それぞれの国でデザインや仕様を変えるなど、ユーザーニーズに寄り添った文房具の製造・販売を行っています」
一方、同社は日本で製造した商品を輸出する形でのグローバル展開も進めている。現在は、パートナー企業を通じて15ヵ国、越境ECサイト「KOKUYO Official Global Online Store(※日本国外からのみアクセス可能)」を通じて約70ヵ国に商品を届けている状況だ。同サイトを2022年にオープンした後、2023年にはさらなるグローバル展開を加速させる方針を固めている。
ところが、「グローバル展開を進める上では、多くの課題が存在する」と語る齋場氏。理由について、次のように続けた。
「特に、流通に携わるパートナーがいない国では、コクヨのことを誰も知りません。ブランド力がない状態で、日本から輸入した文具を諸経費が上乗せされた価格で販売しても、市場の相場と見合わず、消費者に選んでいただくのは非常に困難です。現地の店舗で『まるで高級ブランドのような価格で文房具を売りますね』と揶揄されたこともありました」
このほかにも、売り場にメンテナンスが行き届かないなど、様々な課題を有していたが、コクヨはこれらを解決するために、まず「ターゲットの明確化」に取り組んだという。