「買ってみたら海外発送商品だった」が増えている
インターネットの普及により加速する、国境をまたいだ商取引。経済産業省が2023年8月に公開した『令和4年度 電子商取引に関する市場調査(PDF)』によると、2022年の日本の越境EC(米国・中国間でのBtoC-EC)総市場規模は3,954億円。前年比で200億円以上増加しており、世界の越境EC市場の成長率に目を向けても、2030年までの年平均成長率は約26.2%と推計されているという。
消費者視点から振り返っても、「海外のECサイトでものを買うようになった」「頼んだ商品が海外から届くと知らずに注文した」といった経験がある人もいるかもしれない。これは、ECサイトの多言語対応なども影響するが、実際にものを運び、届ける立場のヤマト運輸はこの変化をどう見ているのか。同社のグローバルロジスティクス部 国際エクスプレスオペレーション課で課長を務める四柳愛氏は、こう語る。
「従来は『越境EC=個人輸入』というイメージが強いものとなっていましたが、近年の消費トレンドを見ると、利用者が若年層にまで広がっています。SNSなどを通じて海外ブランドの情報を得やすくなったことが、一つの理由でしょう」(四柳氏)
こうした消費者は積極的に「海外の商品を手に入れたい」と思って購入しているわけではない。「SNSで発見して買った商品がたまたま海外から届いた」という感覚をもつ点も大きな変化だといえる。
「いわゆる『格安越境EC』の筆頭といえる中国発のアパレルEC『SHEIN』の台頭や、韓国コスメの流行によって『Qoo10』の『メガ割』が盛り上がりを見せたことも、越境EC市場にとっては追い風となりました」(四柳氏)
韓国からの越境ECブームは、コンテンツの流行も大きく影響している。ドラマや音楽といったエンターテインメントを楽しむ流れから「現地の商品を購入したい」というニーズがさらに拡大している様子は「BtoB取引を含むものの動きからも見てとれる」と説明するのは、グローバルロジスティクス部 国際エクスプレス営業課でスーパーバイザーを務める平田悠氏だ。
「アパレルや化粧品だけでなく、インテリア雑貨や家具などの購入も多くなっています。中国製を含む品質に関する不安は、SNSでの『買ってみた』『使ってみた』投稿である程度払拭できる時代ですし、安い価格で気軽に購入できるため、届いたものが想像と違っても、がっかりすることが少ないのでしょう」(平田氏)
なお、日本から海外へ出荷される商品のトレンドとして相変わらず強いのが、ホビー系だ。加えて、中古のブランド品やカメラの人気も根強いという。世界には、日本人に対してものを大切にするイメージをもつ人が多く、実際に海外に出回る中古品に目を向けても、日本の事業者が扱う商品は質が高いケースが多いとのこと。こうした商材を扱う事業者にとって、まだまだ伸びしろがあるのが今の越境EC市場であることは、間違いない。