Shop Nowリリースで勢いづくインスタ
「かゆいところに手が届く」コムニコ マーケティングスイートとは
2018年6月。Instagramの投稿から直接買い物ができる「Shop Now」が日本でリリースされ、EC界隈の話題を総ざらいした。今までInstagramの運用に二の足を踏んでいたEC事業者も、否応なしに興味の矛先が向いたことだろう。
InstagramをはじめSNSに手を出していない、あるいは出すことができていない理由のひとつは、メルマガやカゴ落ちなどの施策に比べて数字の変化が見づらいこと。つまり売上と直結するイメージがわかない、という点があるのではないか。事業全般の統括を行うコムニコ取締役COOの長谷川 直紀さんにその疑問をぶつけてみた。
「ダイレクトマーケティングという文脈ではその通りだと思います。SNSは、CPAでみると割に合わないと感じることもあるでしょう。ですが、短期的な刈り取り施策だけでは手が届きにくい部分、例えばどうやって継続的にユーザーとコミュニケーションを取っていくか、ブランドや会社に対する理解を深めてもらうか、といった、ある程度長期的な目線が必要な部分で力を発揮するのではないかと思います」
コムニコの創業は2008年。iPhone 3Gが日本に初上陸し、FacebookやTwitter が日本語版を立ち上げた年と同じである。創業当時からSNSを軸としたサービスを展開し、すでに今年11年目を迎えた。そんなコムニコが提供するのが「コムニコ マーケティングスイート」だ。
コムニコ マーケティングスイートとは、Facebook、Twitter、Instagram などのSNSアカウントの投稿管理や効果測定にかける作業を軽減するためのSNSマーケティングツールで、サービスを提供したアカウント数はこれまでに2,000を超える。それらの企業やブランドは、具体的にどのような点を魅力と捉えているのだろうか。
「コムニコ マーケティングスイートのユーザー会を行った際には、実際にスマホで投稿した画面のプレビュー表示機能やSNS側で仕様が変わった場合の対応など、使いやすさや対応の早さを評価していただいているような声が多かったですね。システムは社内のエンジニアが基本的には内製しているので、プラットフォーム側の仕様変更にもすぐに対応できます。また、ツール上からチャット機能を使って質問をしてもらうこともできるので、改善できるものは迅速にアップデートしていけるように心がけています」
ユーザーから「かゆいところに手が届く」と評されることも多いというコムニコ マーケティングスイート。このような声がユーザーから寄せられるのは、社内用のツールとして当初開発されたというのが、ひとつの理由かもしれない。社内でツールを活用していたときの、こんな機能があったらいいのに、という思いが形になっているという。
「記事の管理や投稿、アカウント分析、分析レポートのダウンロードはもちろん、他のアカウントの動向を10個までベンチマークできる競合比較機能や、自社のSNSへのコメントやメッセージのステータス管理機能など、色々な細かい機能の豊富さが魅力だと自負しています。また、それらの機能と価格とのバランスというのも、選んでいただいている理由のひとつだと思っています」
EC事業者だったら知っておきたい!Instagram投稿の10箇条
では、EC事業者が実際にInstagramを投稿する際には、どのようなことに気をつければいいのだろうか。Instagramを含めた400アカウントを超えるSNSの運用実績を持つコムニコに、これだけは知っておきたいInstagram投稿の10箇条を教えてもらった。
- ビジネスプロフィールへの切り替えを忘れない
- ペルソナを設定する
- 世界観を大事にする
- 画像にこだわる
- 投稿を工夫する
- ECへの導線を作る
- ハッシュタグを活用する
- ストーリーズにも投稿する
- キャンペーンを実施する
- オリジナルのキャラクターがいれば活用する
フィードフォースとの連携も開始
Shop Nowのタグ設置は「世界観を損ねぬようバランスを調整」
2018年7月末、コムニコはデータフィード(商品データベース)統合管理プラットフォーム「dfplus.io」を提供するフィードフォースと共同して、ShopNowにおける企業やブランドの支援を開始することを発表した。
「Shop Nowがリリースされるタイミングで、私たちとしてもなにかサービスを展開したいと思っていました。そこですでにShop Nowを実装するためのサービスを持っていたフィードフォースさんにお話をいただいたことから、共同サービスを展開することになりました」(長谷川さん)
これにより、Shop Nowを利用するためのカタログ作成や運用を支援してきたフィードフォースとコムニコが培ったSNSアカウント運用のノウハウを組み合わせ、商品データベースから効果的なアカウント運用までを一気通貫で支援することが可能になった。
だが、実際にShop Nowを使うには、Instagramアカウントの開設やFacebook側での設定・承認、さらに本機能用のデータフィードを作成するなど、EC事業者側での準備が不可欠だ。「商品数が多い場合、データフィードを一から自社で作成する作業は、膨大な手間と時間がかかります」と長谷川さんは語る。
「また、実装したからといってすべての投稿にShopNowの機能をつけてしまっては、世界観が損なわれてしまい、ユーザーが離脱する可能性が上がってしまいます。ですので、ユーザーのインサイトを考えながら、そのバランスを調整していくことがポイントです」
Shop Nowの登場によって、ECにおける新たな顧客とのタッチポイントが生まれた。しかし、試しにひとつだけ投稿してみてそのあとは投稿が続かない、という姿勢では、ユーザーとの関係においていい影響を与えないことは想像にたやすい。加えて、投稿したのであれば、それに対する効果測定も必要だ。これらを真剣に取り組もうと思えば、手作業ですべて行うのは現実的な選択とは言えないだろう。自社の商品点数も多く、SNSマーケティングにこれから本腰を入れて注力していきたいのであれば、外部のリソースを活用するというのもひとつの方法ではないだろうか。
フォトジェニックからムービージェニックへ
EC事業者がInstagramで動画を活用するコツ
EC事業者だけでなく、各企業がこぞって注目しているキーワードといえば、「AI」と「動画」ではないだろうか。まずはAIについて、コムニコの見解を聞いた。
「コムニコではまさに、AIで『いいね!』の数を予測するためのシステム開発を行っており、現在は実証実験を行っています。弊社で提供しているPOST365というSNSアカウント検索・分析ツールで、主要な国内の企業やブランドのSNSアカウントの過去の投稿データを収集できるのですが、そのデータをマシンラーニングにかけて、この投稿画像にはどれくらい『いいね!』がつくかを予測するというものです。例えば、Instagramで投稿する候補写真がいくつかあったら、今はなんとなくこっちが良さそう、と勘で選んでいる方が多いと思いますが、いちばん『いいね!』を獲得することができそうなものをAIが選んでくれます。画像選定をサポートしてくれるイメージですね。今後、SNSのクリエイティブの領域にも、間違いなくAIやディープラーニングが入ってきます。投稿画像と『いいね!』の数には、統計的にも相関があることがわかってきていますし、サービス化に向けて準備を進めているところです。検証中ではありますが、これが結構当たるんですよ」(長谷川さん)
続いて動画はどうだろう。Instagramといえば、スマホの画面に合わせた縦型のデザインで、最長60分までの動画を楽しむことができる「IGTV」がリリースされたことは記憶に新しい。24時間限定公開で、最大15秒の動画を投稿できる「ストーリーズ」も、ローンチして15ヵ月間で、デイリーアクティブアカウント数は全世界で3億を超えているという。このフォトジェニックからムービージェニックへの流れを受けてコムニコでは、社内での勉強会開催や動画編集ソフト「After Effects」の制作部隊の強化など、すでに動画の制作に力をいれている。EC事業者のInstagram上における動画活用法について、長谷川さんに解説してもらった。
「動画の流れが来ているとは言っても、フィード上はまだまだ写真のほうが多いので、週に何回かはストーリーズで投稿するなどのルールを決めるのもいいと思います。使い方としては、フィードで投稿した写真の撮り方をストーリーズで説明したり、コーディネートのポイントを動画で伝えるなど、フィードとストーリーズで相関を持たせるといいでしょう」
最後に、Instagram活用の根本ともなる運用における心構えについて、長谷川さんに尋ねてみた。
「何事にも言えることだと思いますが、最初からいきなり成果が出ることはほとんどありません。長い目で見て、PDCAによる改善を地道に積み上げていくことが大事です。中長期的な目線が必要だからこそ、逆に今スタートを切らないと差がつけられてしまうのではないでしょうか。SNSは筋トレのようなものです。途中でトレーニングを止めると効果が表れなくなってしまうように、SNSを途中で止めてしまうことはユーザーが離れていくことにもなりかねません。シンプルなことですが、いちばんの正攻法はコツコツやること、ですね」