伝統的な手法×若年層が好むデザインが成長の要因
ユーザーの思い出を金属に刻む手作りジュエリーEC
手作りのジュエリーやアクセサリーの販売を手がける「オッドブラン」は、2016年から自社ECを展開しています。
ジン・スジョンCEOは、ユーザーの思い出を金や銀などの金属に刻むというコンセプトで、顧客のニーズに合わせた商品を取り扱っています。赤ちゃんの足型ペンダントやカップルの指紋を刻んだネックレスなどを手作りで制作し、販売しています。
他社のアクセサリー商品と差別化を図るため、一部の人気商品に限り、ユーザーからのカスタムオーダーにも対応しています。たとえば、表面に赤ちゃんの足型を入れ、裏面には赤ちゃんの描いた絵などを刻むペンダントなどがあります。
ジンCEOは、自分の思い出や価値を大切にするユーザーと自社EC上で直接コミュニケーションを取り販売を行ったことが、成長の要因だと考えています。また、釉薬付けの純銀を高熱窯で焼き上げる伝統的な手法を守りながら若年層が好むデザインを取り入れたことも、売上を伸ばした一因でしょう。
こうしてオッドブランは、ネットを中心に口コミが広がり、ポップアップストアや実店舗を相次いで出店。韓国国内での認知度が高まりました。
2017年には、グローバルECプラットフォーム「cafe24」を通じて、英語、中国語、日本語の自社ECサイトを開業。越境ECの広まりを受け、海外からのアクセスも増加しました。実店舗を訪問する外国人観光客も増えているようです。
ジンCEOは、中世ヨーロッパで手紙を封書する時に使った「ワックスシール」のロゴを、米国、中国、日本で特許を出願し、積極的に海外展開を行っています。
海外市場の中では特に日本で反響があり、2018年秋には大丸京都店でポップアップストアも出店する予定です。また、中国語のサイトへのアクセスや購入に関する問い合わせも増えているので、今後売上も増加することが期待されています。
「国内で競合と戦うよりはハンドメイドのニーズが高い海外に」
ここからは、オッドブランのジンCEOとの一問一答をお届けします。
――日本、中国、アメリカでもECを展開されていますが、韓国のほかにその3ヵ国でECを始めようと思ったのはなぜですか?
韓国でハンドメイド品の取引が活発になるまでは、大手ブランドのジュエリーや低価格のアクセサリーがほとんどでした。そのため、国内で競合と戦うよりはハンドメイドのニーズが高い海外に目を向けた方がよいのではないかと思い、アメリカの「Etsy」で販売を開始しました。商品のアップデートを行いながらノウハウを蓄積していったことで、徐々にユーザーから反応が来るようなりました。
その後、韓国でもハンドメイドのニーズが生まれたことを受け、自社ECを構築しました。また、海外からの反応を確認するため、ソウルの観光スポット「仁寺洞」に店舗もオープンしました。ECと実店舗の運営を行うことでユーザーの反応や意見を直接聞くことができ、とてもよかったと思います。帰国後に再度購入したいという海外ユーザーに対応するため、越境ECサイトを構築しました。
――日本で人気のある商品に特徴はありますか?
「Seal the moment(瞬間を封印する)」というブランドのコンセプトが、日本のユーザーに支持を得ていると思います。特に、アナログな感性を求めるユーザーへ「世界に一つだけ」というメッセージを発信しているカスタム商品が人気です。
実際、猫の肉球を刻んだブレスレットや、赤ちゃんの手形を刻んだネックレスなどが注文されています。また「我が子の足型シーリングワックスネックレス」を注文したユーザーからは、「素敵な思い出ができました」とのコメントもいただきました。
SNSではUGCを積極的に活用 今年の秋には大丸百貨店にも出店
――「我が子供が描いた絵封蝋ネックレス」など、個性的な商品名が多いように感じました。商品の特徴やこだわりについて教えてください。
「大切にしたい思い出」を形にした商品開発に取り組んでいます。猫の肉球や生まれた赤ちゃんの足型など、大切な思い出を共有できる商品企画に力を入れています。ペットと家族の絆は世界共通の関心事なので、海外のだれもが弊社の潜在顧客だと考えています。
――LINEはいつから導入されましたか?またLINEの活用方法や導入後の変化などあれば教えてください。
2016年に日本語のECサイトを構築し、顧客とのコミュニケーションを強化するため、2017年にLINEを導入しました。カスタム商品に関する問い合わせが多いですが、リアルタイムで対応することができるので、ユーザーからも好評をいただいています。
――FacebookやInstagramの運用にあたって心がけていること、工夫している点などはありますか?
高画質の商品詳細画像も大切ですが、SNSには購入したお客様がアップした写真を使うようにしています。知り合いや友達がアップしたような画像と口コミを投稿することで、親近感や信頼感を伝えることができるというのがポイントだと思います。また、毎月レビューコンテストを行い、投稿者にはレビューポイントを支給しています。これにより、自発的にユーザーにブランドと関わってもらえたらと思っています。
――年内にポップアップストアの出店も行うとのことですが、今後取り組んでいきたいことや目標はありますか?
昨年9月「東京ギフトショー」に参加することで、日本ユーザーのニーズを把握することができました。特に、ペットの足型ジュエリーの反応が良かったです。今後は、日本向け商品の制作日数を短縮するため、ジュエリーメーカーやファンシーショップとの提携も計画しています。
また、韓流グッズ製作の経験を活かし、日韓芸能人のグッズ製作に関する提携も行っています。今年秋の大丸百貨店での出店をはじめ、日本での認知度向上に向けた取り組みを重ねていきます。