Facebook上でコミュニケーションが完結
長期的なコミュニケーション設計を
2017年3月に刊行した『売れるECサイトのすごい仕掛け』での取材から約3ヵ月。橋爪さんが感じている動画広告市場の変化は、「Facebookの効果の伸び」だと言う。
「以前は、Facebookでリーチし、コミュニケーションし、エンゲージメントを取って、検索され、リスティング広告で刈り取るというスキームでした。その流れも当然あるのですが、明らかにカスタマージャーニーが変わってきていると感じます。あえて検索しに行くというよりは、Facebookのウォールの中で動いている。以前、スマートフォンの動画で見た商品が、リマーケティング広告でウォールに出てくるから、そこでコンバージョンするのでしょう。Facebookに滞在している時間が長くなっている」
このような変化があるからこそ、EC事業者のFacebook活用方法も、必要なときだけ広告出稿するといったスポット的な活用ではなく、継続的なコミュニケーションを取っていくべきと主張する。
「ファンページをしっかり作り、動画をはじめとする多種多様なコミュニケーションを取っていく。当社のクライアントでは、広告としては効果が低かったのに、ファンページに投稿したら、ものすごくシェアされた動画コンテンツも出てきています。
もちろん、ファンページで『いいね!』して入ってこられる方は、もともとその商品に対してのエンゲージメント率が高いわけですが、ファンページ上のコミュニケーションで、どんどん関係が育まれている実感がありますね。定期的な情報発信が、確実に購入に結びついています。一方、『買わせよう』という情報発信は逆効果です」
Facebookページといえば、キャラクターを中心に据えたコミュニケーションに始まり、いま一つ正解が見えないまま、担当者が投稿を続けるのに疲弊する印象があったが。
「業種によってKPIを一概に設定することはできませんが、食品、コスメ関連のクライアントからの要望が多く、動画の視聴時間はじめ、数字で成果が見えるようになってきています。コンテンツへの接触回数が増えるほど、購入率が上がってきているのは、エンゲージメント率がビジネスとして成り立つ指標の1つになったことを意味していると思います」
マーケティング企画とコミュニケーション設計は分けて考えるのが、動画広告で成功を収めるエイチアンドダブリューの方針だ。顧客とのコミュニケーションの積み重ねを重要視する橋爪さんは、何より長期的な視点での設計を勧める。
「4月時点ですでに、年末商戦に向けたコミュニケーションを行っているクライアントがいます。ソーシャルメディアと動画のコミュニケーションにより、効果が期待できることはどの事業者もわかっています。コミュケーションを行うだけではなく、独自性のあるプロモーションモデルを組み立てないと、うまくいかなくなっているわけです。年末になってから焦って広告出稿しても、儲かるのは代理店とメディアだけでしょう」
4月の取材時点で年末とは随分先のことに感じるが、消費者に違和感はないのだろうか。
「最終的に、お客様がここで買おうという意思決定に至るまでに、さまざまなコミュニケーションを継続的に行っていかないと、選んでいただけなくなってきていると思います。『もっと安いものがあるんじゃないか』『他にもっと便利なものがあるんじゃないか』といった迷いは当然出てくる。最終的に選んでいただくには、意思決定に至る前にお客様の共感を得るフェーズを踏んでおかなくてはなりません」