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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECホットトピックス(AD)

ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは 川連一豊さんに訊く

2016年3月17日、ECzineでは無料カンファレンス「ECzine Day 2016 Spring」を開催します。基調セッションのタイトルは、「ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは」とし、JECCICA 代表理事 川連一豊さんにモデレーターをお願いしました。事前に、川連さんのご見解を訊きました。

ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは

――2015年、小売ECのホットトピックスといえば、オムニチャネルとインバウンド対応(越境EC)でした。先進企業さんでは、もう終わったようにも見えますが。

これからだと思います。ようやく土台の部分、データの連携が終わり、リアルとネットのお客様を連携できるようになったところです。2016年は、実際にどう運用していくかになるでしょう。

――オムニチャネル先進企業というと、日本ではやはり、カメラのキタムラさんでしょうか。

そうですね。キタムラさんはまず、オムニチャネルを理解した経営トップが素晴らしいと思います。多くの企業が、そこでまずつまづきますから。

それから、オムニチャネルを推進した逸見さんの、経営者に対するプレゼンがうまかった。「オムニチャネルはスマホです」という、すごくシンプルな定義をつけたことが、経営トップの理解につながったのでしょう。

キタムラさんは、オムニチャネル以前から、iPhoneの修理を行っていたので、ほかの企業よりもスマホに対する理解が早かったというのもあると思います。やはり、経営トップがスマホを使うまでに時間がかかったところは、その世界観の理解も遅れました。いろいろな企業の社長さんとお話ししますが、まだピンときていない方が多いです。

さらに、逸見さんが、オムニチャネルの費用は、自分のところのEC事業部が全部受け持ちますと言ったこと。今もなお、オムニチャネルに関する経費を、「これはこっちに、それはそっちに」と調整している企業が多いのですが、全部受け持ちますというのは、普通のサラリーマンでは言えないことだと思います。

とはいえ難しいのは、キタムラさん式のオムニチャネルがうまくいったのは、商品単価が高いからなんです。ほかの小売企業で、そっくり同じやりかたをしてもうまくいかないと思います。

――パネリストに、三越伊勢丹の中島さんが登壇してくださいます。百貨店さんも商品単価は高いですが、いかがですか?

三越伊勢丹さんは巨大企業ですから、そこで組織に横串を刺そうというのは、相当なおお仕事だと思います。百貨店さんにかぎらず、ネットとリアル店舗の人は、使っている言葉が違う。お互いに外国人みたいなものです。だから、プロパーだけでオムニチャネルを推進するのはなかなか難しい。外で揉まれてきた人が必要です。三越伊勢丹さんは、あれほどの巨大企業にもかかわらず、外から中島さんを呼んだこと自体がすごいことだと思います。

キタムラさんと違うところは、社内もお客様も、ネットやスマホに詳しい方が多かったということ。必然的に、オムニチャネル対応せざるを得なかったという事情もあるでしょう。一方、百貨店さんの場合は、それよりも丁寧な対人接客を求める方も多いでしょうから、これからゆっくりと、運用を進めていくことになるのではないでしょうか。

――パネリストのおふたりとも高単価商品を扱っているのですが、日用品のような低単価商品を扱う小売ECのオムニチャネルは、どうでしょう。

代表的な例が、ネットスーパーになると思います。今実は、ネットスーパーの案件に携わっているのですが、ファンが根強いという印象です。ほかに浮気せず、必ずその店で、けっこうな商品数を買ってくれます。

そうなると、おもてなしよりは利便性を求められている。バックオフィスを改善して、利便性を追究することが優先です。レジに並ぶ時間も惜しい、働くお母さんのために何ができるか。ガラケーユーザーも多いですし、返品対応、ポイント連携、クーポンはあまり関係ないかなと感じています。

――人工知能がバズっていますが、小売ECに役立つテクノロジーは何がありますか?

まずひとつは、今年の夏に出る予定の、ウェアラブル翻訳デバイスの「ili(イリー)」です。100店舗ほどの小売事業者さんにお見せしたのですが、皆さん口をそろえて、「仕事のために英語、中国語を勉強するのはやめた」とおっしゃいます。これがあれば、インバウンド観光客がいらっしゃっても、ざっくり話ができますから。

それから、ドローンと自動運転。急激にECが成長しすぎて、急増ドライバーが増え、質が落ちています。僕も土曜日に、「宅配ボックス壊しちゃいました、すいません」みたいな電話がかかってきましたから。現在ドライバーが11万人のところを、20万人に増やさないとまわらない、でも質も担保したい。それが現実的かというと疑問なので、自動化についても考えざるを得ないと思います。

人工知能については、某大手不動産会社さんがチャットを自動化するという話を聞いています。不動産は「大学生ですか?」「家賃の予算は?」のように質問も限られているので、やりやすいようです。そこに心理学をうまくつかって、営業さんに引き継ごうとしている。

一方で、ECの場合だと幅広すぎるので、人工知能でどこまでいけるか。最後の背中を押すところとか、部分的な使いかたはできると思うんですが、それにしても皆さん、人工知能に夢中ですよね。昔からある話なのに、宝の山みたいに思っている。

――コンテクチュアルコマースの最初の一歩、ソーシャルメディアにカートがつくという話、なかなか進みませんね。「PayPal Commerce」は発表されましたが。

2月か3月かなと思ってたんですが、なんとなく遅れていますよね。

――そんな時代、小売ECサイトの役割とは。

オムニチャネル、インバウンド、ソーシャル、人工知能、いずれもここまで発展してくると、リアルにもECにも影響を与えると思います。どちらも、接客のレベルを上げていかなくてはならない。

それは利便性だけではなくて、ソーシャルのような独特の世界感もあります。昔、「お客様は神様です」と言われ、一方のEC業界は「殿様商売」だと言われていた。それが今、ソーシャルメディアによって、「友達商売」になっています。仲の良いお客様と、友達のように接して買ってもらう。

僕も以前、ECをやっていましたからわかるのですが、仲良くなったお客様は浮気されないし、向こうから相談してくれるようになります。すべての小売が、そこまでいく必要があるかなと。

テクノロジーはそれの実現のために用いるべきですが、乗り遅れると、新規のお客様を獲得できなくなっていくでしょう。一度、友達商売、接客を味わった方は、ほかのお店にも当然求めてきますから。売れている小売さんは、テクノロジーを使わずとも、実は、昔からそういうことをやってきたんですけどね。(了)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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