最高の接点なのに、なぜGoogleはECから撤退したのか
検索。ECの視点からして、これほど明快な接客(インタラクティブな買物客とのやり取り)はありません。欲しいものをシンプルに伝えてくれる、CROを図る上で最高のタッチポイントです。だからこそ、検索エンジンはコンシェルジュ(案内係)でなくてはなりません。検索ワードと完全一致の時代はとうに終わり、買物客の意図を汲むようになりました。
ただし、コンシェルジュも立場によって目的が異なります。Google、楽天市場、ショップ、それぞれのコンシェルジュ像(検索の在り方)と、CROの関わりから観ていきましょう。今回はGoogleです。
Google’s mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
Googleは自らの使命を「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」と定義しています。
そんなGoogleといえば、やはり検索エンジンです。しかし、EC分野ではこれまで、スマホアプリの「Google Shopper」とサイト内検索の「Google Commerce Search (GCS)」を世に送り出したものの、いずれも撤退しました。日本でも10社前後が導入していたGCSですが、2014年に幕を下ろしています。
その理由として、公益性すら持つに至ったGoogleの「整理し」「使えるようにする」という使命、中でも検索という本業で矛盾を孕んでいるからだと囁かれています。本来「商売」というものはバイアス(偏り)の掛かるものです。AdWordsなどのように、公明正大に購入された権利行使と異なり、暗黙のバイアスは相応しくないという判断です。では、その証左を見てみましょう。
こんなにも変わったGoogle:「クッキー」が売れなくなった
「クッキー」と「クッキー 通販」という検索フレーズを比べてみます。
「クッキー」1語だと、「クッキー」について知りたいのだとGoogleは判断しています。それが証拠に広告が出ていません。お金で買えないIT用語のcookieも混ざっています。
ところが「クッキー 通販」にしたらどうでしょう。PLA(商品リスト広告)やリスティング広告がずらりと並びました。もちろん、プライベート検索結果を非表示にしています。右上の歯車アイコンの左にある地球アイコンがその証拠です。その上で、Googleは私がクッキーを買いたいのだと判断しているのです。
一般的な情報でググることを、Informational Search Queriesといいます。「役立つ情報知識を探したい」という目的です。その場合に向けたサイト側の施策としては、SEOが有効です。そして、その対象はショップサイトではなくコーポレイトサイトがよいでしょう。残念ながら、「クッキー」は『Googleで売れない』時代になりました。
逆に、ショップサイトを繁盛させる(動線を作る)ために、コーポレイトサイトの存在が意味を増しています。楽天市場内にしかページのないショップも、今後はコーポレイトサイトを立ち上げ、コンテンツ・マーケティングやメディアコマースを考えるのもいいでしょう。
買いたいものをググることは、Transactional Search Queriesといいます。「特定の商品を買いたい」という目的です。その場合に向けた施策は、リスティング広告なのです。そこで初めてショップサイトへの導線ができます。SEOとリスティング広告のどちらにお金を使うべきか、悩む必要はありません。ちなみに、全体のトラフィック量比は、おおよそInformational:Transactional = 9:1と言われています。
Googleは一方で、Google Shopping (US)の先進性やGoogle Expressというリアルを通じて、ECにより多面的に再進出もしています。その理由は、商品検索ポータルとしてamazonにトラフィックを大きく奪われたためです。これはスマホアプリが後押ししました。
Transactionalのトラフィック量が相対的に多くなくても、広告主がいるのはこちら側だけです。背に腹は代えられません。Amazonが検索連動型広告「Amazonスポンサープロダクト」も始めたニュースは、Googleの本業で看過できない事態なのです。