5月の百貨店売上好調 ECで高単価商材を売るには
今回の特集テーマにちなんで、伊藤さんは日本百貨店協会が6月23日に発表した2022年5月の「全国百貨店売上高概況」と、そのデータを参照したいくつかの報道をもとに、高単価商材やラグジュアリー分野に関する消費動向を取り上げた。緊急事態宣言など行動制限のないゴールデンウィークを含む5月の百貨店売上高は57.8%増、入店客数は52.8%増と好調だった。商材別に見ると「ラグジュアリーブランドや時計、宝飾、美術など高額商材は、コロナ前の2019年の実績も超えた」とある。
2021年6月の調査ではあるが、博報堂は「ニューノーマル時代の購買行動調査」を公開している。それによれば、オンラインでの買い物のイメージ・メリットは「すぐに欲しいものを見つけることができる」「安く購入できる」「(他の店・ブランド・商品と)比較検討しやすい」が6割を超え、店舗での購入は「安心感がある」が72.9%でトップとなった。同調査では、商品の値段に対して、オンライン・店舗どちらで購入したいか聞いたところ、1万円未満の商品は「オンラインで購入したい」との回答が過半数に、3万円を超えると、6割以上の人が「店舗で購入したい」となっている。
2022年6月に発表された、NTTコム リサーチによる購買行動についての調査では、インターネット上の店舗で商品を購買しない回答者にインターネット上の店舗で商品を購入するデメリットを尋ねると、「配送料がかかる」が36.3%で最多、32.7%の「実物の確認ができない(商品やサービスの情報が十分でない)」、26.0%の「インターネットを利用しないでも、満足できる購入場所がある」の順となった。これらを受けて、ECでの高単価商材の販売について伊藤さんはこのように述べる。
「オンラインであっても、便利、経済的合理性以外のプラスアルファを顧客に提案しなければ今後の生き残りは難しいかもしれません。高単価商材はその商品単価に占める物流の原価率が低くなるため、ラグジュアリーな梱包で体験を高めるというアイデアがひとつあります。当社のクライアントでも一部取り組まれているところもありますが、多くはものを売る前のオンラインでのコミュニケーションに精一杯なのが現状です。当社は梱包資材会社と連携していることもあり、梱包素材の選定やデザインなどのご提案も可能になっています」
しかしながらオンラインだけでは、店舗を歩いていてたまたま見つけた商品が気に入った、店員とのやり取りで自分では想像しなかったものに出会えた、といった驚きを含む体験の提供が難しいのも事実。だからこそOMOが注目されるわけだ。
ECの覇者と言われる米Amazonは、2022年5月にアパレル店舗「アマゾン・スタイルAmazon Style」をオープンしている。アプリで二次元コードをスキャンして商品に関する詳細な情報を得たり、アプリ経由で試着室やレジでその商品を用意するよう依頼するなどテクノロジーを組み合わせた実店舗だ。「今後の成長のために、オンラインと店舗、双方の得意分野を活かすことが必要と考えたからではないでしょうか」