ECサイトの売上アップやデザインの刷新、セキュリティ面の改善には、定期的なリニューアルが不可欠です。スムーズに更新作業を進めるためにも、作業を進めるにあたってのポイントや注意点、手順などをしっかりとおさえておきましょう。
この記事では、ECサイトをリニューアルするときに把握しておきたいポイントを詳しく解説します。
ECサイトのリニューアルを考えるタイミング
ECサイトのリニューアルを考える事情はサイトや企業によってさまざまですが、次のようなタイミングで更新作業を行うケースが多く見られます。リニューアルを検討するタイミングを決めるときの参考にしてみてください。
システムが古くてセキュリティに懸念があるとき
ECサイト構築時は最新のシステムを導入していたとしても、一定の期間が経過するとシステムは古くなってしまいます。システム老朽化によってセキュリティ上の懸念が生じている場合、個人情報の漏えいなど、ユーザーにとって不利益をもたらす可能性も出てくるため、早めにシステムを変更したほうがよいでしょう。
また、使用しているシステム自体が古くなってしまうと、動作が重くなり、ECサイトの利便性が低下します。定期的にサイトの運用状況を確認して、リニューアルが必要かどうかを早めに判断しましょう。
システムの機能が不足しているとき
ECサイトの規模が大きくなるにつれて、機能面での不足を感じることもあるものです。 機能に不足が生じている場合、効果的なプロモーションが行えなかったり、利用したい外部システムとの連携ができなかったりすることがあります。ECサイトそのものを全面的に作り替える必要がある場合は、大きな労力を要するので注意が必要です。
スマホなどのデバイスに対応したいとき
近年、スマートフォンやタブレット端末などからのECサイトへのアクセスが増加しています。また、スマートフォンでの閲覧に対応していないECサイトは検索エンジンからの評価が低くなるため、対応が必要です。 スマートフォンでの閲覧に対応した「レスポンシブ対応」にしていない場合は、販売の機会を失うことにもつながるため、早急にリニューアルを検討しましょう。
ECサイトのリニューアル前にあらかじめ取り組んでおくべきこと
ECサイトのリニューアルは、実際に作業を進める前にいくつか決めておくことがあります。あらかじめチェックしておきたいポイントを解説します。
現在のECサイトが抱えている課題を洗い出す
ECサイトのリニューアルを検討するときは、まず現在のECサイトが抱えている課題を洗い出す作業が必要です。「売上が伸び悩んでいる」「操作がしづらい」「表示速度が遅い」など、さまざまな課題を挙げることができるでしょう。
また、ECサイト運用面での課題改善のためには、運用担当者や制作担当者など、さまざまな立場の担当者の意見も取り入れることが大切です。
リニューアル後に達成したい目標を決める
ECサイトのリニューアルを円滑に進めるには、どのような目的でリニューアルしたいのかを明確にしておくことが大事です。「売上を20%アップさせる」「リピーター率を15%高める」など、具体的な目標を掲げてみましょう。
どのプラットフォームでリニューアルするかを選ぶ
ECプラットフォームには、ASPやオープンソース、パッケージ、フルスクラッチなどの方法があります。それぞれの特徴についてまとめると、次のようになります。
ASP | オープンソース | パッケージ | フルスクラッチ | |
---|---|---|---|---|
作成方法 | 作成に必要なシステムをレンタルする | 無償のソースコードをもとに作成する | パッケージをもとに独自で開発する | 自社で開発を行う |
作成コスト | 低い | 低い | やや高い | 高い |
運用コスト | 低い | 低い | やや高い | 高い |
作成期間 | 短い | 短い | やや長い | 長い |
カスタマイズ性 | 低い | やや低い | 高い | 高い |
サーバー | 不要 | 必要 | 必要 | 必要 |
このように、それぞれの作成方法で特徴が異なります。ほしい機能が備わっているかを確認したうえで、操作性、費用感などを比べてみましょう。ほかにも、既存のECサイトで保持している顧客データなどを移行する費用などもかかるので注意が必要です。
ECサイトをリニューアルするときの注意点
ここでは、ECサイトをリニューアルする際に事前に把握しておきたい3つの注意点を解説します。
必要な準備期間を設ける
リニューアルに関する計画を練ったり、作業体制を整えたりしないままリニューアル作業を進めてしまうと、かえって使いづらいサイトに仕上がってしまう場合もあるので気をつけましょう。
リニューアルによる売上やアクセス数の減少を防ぐためには、必要な情報を事前に集め、作業期間をしっかりと確保することが大切です。
予算が超過しないよう事前に方針を決めておく
当初定めた予算から大幅な超過が生じてしまわないように、取り組みたい作業範囲をあらかじめ明確にしておくことが重要です。リニューアルする目的や内容を社内できちんと擦り合わせて、予算オーバーを防ぎましょう。
また、ECプラットフォーム選定時は複数の会社を比較し、自社に適したシステムを選ぶことが大切です。
リダイレクト設定を行う
ECサイトのリニューアルに伴ってURLを変更する場合は、「301リダイレクト」を行って、新しいECサイトにアクセスできるように設定しましょう。リダイレクト設定をきちんと行っていないと、リニューアル前のECサイトが表示されてしまい、新しいECサイトに誘導できなくなってしまいます。
ECサイトのリニューアルを行う手順
ECサイトのリニューアルは、基本的に次の手順に沿って進めていきます。
- リニューアルの目的や課題を整理する
- 社内外への告知と企画書の作成
- 開発会社(ベンダー)の決定
- 要件定義を行う
- ECサイトのシステム・デザインをリニューアルする
- テスト運用を行い、問題がなければ公開する
次項より、それぞれについて解説します。
手順1. リニューアルの目的や課題を整理する
まずは、社内でECサイトのリニューアルチームを発足させ、リニューアルの目的と現状の自社ECが抱える課題を洗い出しましょう。
ただ「売上が下がっているからリニューアルする」のではなく、「自社の顧客が求める情報やデザインとミスマッチしているため、抜本的に見直したい」や「取扱商品を拡大するため、テイストを見直す必要がある」など、具体的な課題を挙げることが重要です。
この時点で具体的に目的や課題を洗い出すことで、その後の進捗もスムーズになるでしょう。
手順2. 社内外への告知と企画書の作成
プロジェクトチームを発足させたら、チーム内でECサイトリニューアルの企画やコンセプトを決定し、その内容を企画書に落とし込みます。その後、社内稟議を通して合意形成行うことが必要です。
ECサイトのリニューアルのような大掛かりな取り組みは、担当チームの一存では決定できないことも多いでしょう。関係部門から出てくる意見を取りまとめつつ、落とし込んでいく必要があります。
手順3. 開発会社(ベンダー)の決定
社内での承認後、あるいはそれと並行して、リニューアルを依頼する開発会社(ベンダー)を決定します。開発会社を決定するうえで重要なポイントは「リニューアルに対する意図をくみ取ってくれるかどうか」や「スケジュールを守ってくれるか」などです。
選定は「開発会社の選定と問い合わせ→コンペ(※複数社の場合)→決定したら社内承認」の手順で行いつつ、併走に足るパートナーを選びましょう。
手順4. 要件定義を行う
手順3までクリアしたら、次はECサイトリニューアル後の要件定義を実施します。たとえば、以下のような要件が定義すべき内容です。
ECサイトのリニューアルで定義すべき要件例
- 目的・コンセプト
- サイト要件
- 実行計画
手順5. ECサイトのシステム・デザインをリニューアルする
要件定義後は、「定義書に沿った企画構成→ワイヤーフレーム作成→デザイン・コーディング」の手順でECサイトのリニューアルを行います。
実際の作業は外部の開発会社が行うケースが大半ですが、内容確認などで適宜やり取りも発生します。この際、途中段階でも「自社の希望に沿った要件になっているか」や「スケジュールに間に合いそうか」などをチェックするために、こまめなやり取りを心がけましょう。
手順6. テスト運用を行い、問題がなければ公開する
サイトをリニューアルしたからといって、「即公開」というわけにはいきません。公開後にエラーが発生しないように、まずは自社でテスト運用を行う必要があります。
また、リニューアル後の運用にリソースが足りているかという観点も重要です。公開後の運用段階では、PDCAサイクルを回して内容を改善させていく必要もあるので、自社でのデータ活用の体制構築が求められるでしょう。
なお、公開後に改善箇所の効果を可視化するためには、Googleアナリティクスやヒートマップツールなどのツールの活用が効果的です。
売上アップを目指すリニューアルのポイント
ECサイトのリニューアルにあたっては、売上を高めるためのポイントをおさえておくことが重要です。特に重視しておきたい3つの点を解説します。
UI・UXを考えたデザインにする
「UI(ユーザーインターフェース)」の「インターフェース」とは「接点」という意味で、ユーザーとサービスの接点すべてを意味します。サイトリニューアルにおいては、レイアウト、デザイン、フォントなどを含めたサイトの見やすさや操作性を指します。
一方、サイトリニューアルにおける「UX(ユーザーエクスペリエンス)」は、サイトのサービスを通じてユーザーが得る体験のことです。
ECサイトをリニューアルする際はUIとUXの両方を意識します。ユーザー目線で使いやすいサイトを目指すことは、結果として売上アップにもつながるため、SNSやアンケートなどを通じて顧客の意見をチェックしてみるとよいでしょう。
コンテンツSEOを検討する
コンテンツSEOとは、ユーザーの役に立つ良質なコンテンツを作成することで、検索エンジンの評価を高めることを指します。ECサイトにブログなどのコンテンツを追加することで、検索結果の順位を押し上げられれば、サイトのアクセス数を増やすことにもつながるでしょう。どのようなペースで更新し、コンテンツを発信していくのかを事前に決めておきましょう。
運用面で支障が出ないための準備をしておく
ECサイトのリニューアル完了後にアクセス数が増加した場合は、サーバーに負荷がかかります。アクセスが集中してもECサイトをきちんと表示できるのかなど、サーバーの容量や負荷への耐性などを事前にチェックしておきましょう。
アクセス数が増えたことでサイトに支障が出てしまうと、機会の損失につながりかねません。継続的に売上を高めていくためにも、サイト規模に適した環境を適宜整えていきましょう。
リニューアルによるリスクを予測し、対策を講じておく
リニューアル後は、大量アクセスによるシステムダウンや、予期せぬシステムエラーが起こりがちです。「手順6」のテスト運用でなるべく多くのリスクを洗い出しておくことが理想ですが、思わぬトラブルが発生するケースは多々あるでしょう。
そういった場合を想定して、外部ベンダーと連携しつつ対応する体制をあらかじめ整えておきましょう。
ユーザーの体験価値を損ねないようにするためには、カスタマーサポートの準備や、旧サイトからのリダイレクト設定も忘れないよう行う必要があります。
スケジュール管理をこまめに行う
ECサイトリニューアルにおいて、スケジュールが遅延する原因は「要件定義漏れ」や「工数見積もりミス」などによる、作業の停滞です。
長期にわたるプロジェクトにおいては、1つの遅れが、全体スケジュールの遅延につながりかねません。特に、プロジェクトリーダーは外部の開発会社の稼働日数やリソース、信頼性なども加味しつつ、リニューアルを滞りなく進行させましょう。
まとめ
ECサイトのリニューアルにおいては、単にデザインを変更するだけでなく、セキュリティ面の強化やユーザビリティの向上につなげていくことが大切です。ユーザーにとって使いやすく、安全なECサイトにすることで、結果的に売上アップにもつながるでしょう。
この記事で紹介した基本的なポイントや注意点、手順などを踏まえたうえで、自社に適したECサイトにリニューアルしてみましょう。