イオンリテールは、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)と開発した、過去の販売データにもとづきAIが適切な値引き率を提示する「AIカカク」の適用範囲を拡大する。既に実装している惣菜部門と日配品の一部に加え、2024年5月8日より畜産部門に、5月22日より水産部門に適用。また、客数と商品の需要予測をもとに、AIが最適な発注数を提示するシステム「AIオーダー」の適用を、2024年6月から新たな日配品(漬物やチルド飲料、チーズ、ハムなど)およびデリカの冷総菜やサラダへと拡大する。
AIカカクとAIオーダーの開発にあたっては、日本IBMのデータ・サイエンティストとコンサルタントが、AIなどを活用した予測モデルや最適化モデルの構築、システム構築を支援した。
イオンリテールによると、2021年5月にAIカカクを適用開始し、データに裏付けされた売り切り価格で販売することで、導入前と比べてロス率が10%以上低減している。そのほか、値引きや売り切り業務に関わる店舗スタッフの教育時間が低減された。
今回、イオンリテールは日本IBMのデータ・サイエンティストとともに、部門ごとの販売特性や値引きによる売れ方の変化などを細やかに分析。店舗特性も考慮した上で、予測と売価最適化モデルに様々なチューニングを実施した。
2023年に導入されたAIオーダーの活用により、発注にかかる時間が半減され、入荷整理や品出し、在庫管理、値引き、発注修正など、店舗商品管理における業務負荷が軽減。生産性向上につながる成果が確認できたため、適用範囲をさらに拡大することとなったとのこと。
AIカカク
販売実績や天候・客数などの環境条件をAIが学習、売場の商品のバーコードを読み取り陳列数を入力するシンプルなシステム設計と画面設計となっている。入力後はAIが提示した適切な割引率で携行のシール発行機から自動印刷される。該当商品にシールを添付して作業が完了する。
AIオーダー
適切な発注数を自動で提示し、発注時間を平均で50%削減。加えて、AIによる客数予測や過去の販売実績とあわせて、曜日・価格・気温・プロモーションなどを機械学習させることで、既存システムと比べて予測精度が最大40%改善した。気温の変化などによる突発的な品切れ削減と過剰発注の防止により、平均30%の在庫削減にもつながっている。
日本IBMは、同ツールを値引き・廃棄リスクと販売機会ロスを考慮し、利益を最大化する適正発注を行えるように設計した。具体的には、特売や販促を考慮した変動するPI値を予測し、適切な発注数を算出する。