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「バズワードに都度対応」の使い捨て型ECサイト構築はもう古い クラウドを活用した「PaaS」新サービス登場


 オムニチャネル、スマホ対応など、ECを取り巻く環境変化にサイトを構築する体制が追いつかない。そんな課題を解決するために、EC業務特化型PaaS「Commerble EC PaaS」がリリースされた。この新サービスためにジョイントベンチャーを設立した、2社の代表にお話をうかがった。

クラウドで従来型ECサイト構築の課題を解決する

 EC業務特化型PaaS「Commerble EC PaaS」は、サーバーやネットワークなどのプラットフォーム部分の管理をサービス提供会社に任せ、在庫管理やO2O連携、コンテンツ管理などの機能の部分をパーツやAPIで利用し、自社用にカスタマイズしていくという、サイトの構造ごとに仕組みを分けた、ECサイト構築のためのサービスである。

 サービス名に入っているPaaSとは、Platform as a Serviceの頭文字をとったもので、ひとことで言えば「アプリケーションを実行するためのプラットフォーム」(CodeZineより)のこと。これまで、スクラッチで大規模ECサイトを構築してきたシグマコンサルティングと、EC支援分野で先進的なクラウドサービスを提供してきたクロスワープが、合弁会社Commerbleを立ち上げ、世にリリースした。

 「今は、オムニチャネルやスマホ対応だけでなく、独自IDと連携させてイベントでも売りたいなど、事業者さんごとにさまざまな要件が飛び交っている状態です。それに対し、ASPやSaaSのサービスでは追いつかないし、パッケージだとカスタマイズがしにくい。一方で全部スクラッチで作っていたら、コストも時間もかかってしまう。そこで、基盤の部分はこちらに任せていただいて、付加価値をつけるサービス開発に注力していただけるよう、『Commerble EC PaaS』を作りました」

株式会社Commerble 代表取締役、シグマコンサルティング株式会社 代表取締役
橋本圭一さん

 そう語る橋本さんは、Microsoft AzureやAmazon Web Servicesなど、クラウドサービスに精通した技術者でもある。

 「ECは企業にとって重要な『販売』を担い、国としても重要なビジネスなのにもかかわらず、バズワードが出てきたらその都度新しいサービスで対応して、というやっつけ感があったと思います。それほど、進化のスピードが早かったということでしょう。

 それに対し、大規模ECサイトの場合は、パッケージを購入して構築するパターンが多いのですが、納品された時点で『完成品』なので、それ以降のアップデートがなかなか難しい。すると3~4年で陳腐化してしまうため、新たにパッケージを購入して構築し直すという、使い捨てが繰り返されています。

 これまでのシステムで貯めてきたノウハウを捨てることになるので非効率だし、技術に愛を持っている立場から見ると、そもそもコンピューティングってこういう使いかたじゃないはずだ、という思いをずっと持っていました」

 クラウドサービスは「使った分だけ支払う」のが特徴の1つだが、「Commerble EC PaaS」の料金体系もそれにならい、初期費用は無料で、1注文あたり200円というもの。

 「クラウドサービスは規模の経済で、技術の発達とユーザーの増加、つまり時代が進むほどトランザクション費用が下がっていきます。2015年内には、1注文160円くらいまでに下げたい。とはいえ現状でも、パッケージを購入して開発するのと比較しても、 初期構築の見積もりが3割くらいになるようです」

所有せずに使い続ける 新しいECサイトの持ちかた

 目に見える費用だけでなく、会計や契約の形もクラウドによって変わる。

 「従来の、スクラッチもしくはパッケージを購入してSIerさんが構築・納品するという形態だと、事業者側がECサイトを『資産』として所有して、減価償却していくことになります。しかし先ほど橋本さんが話したように、納品された時点で『完成品』であるECサイトは、どんどん劣化していってしまう。それを防ぐために、その都度発注して、開発・納品してというのを繰り返していたわけですが、非効率なやりかたでした。

 一方で、『Commerble EC PaaS』で構築したECサイトは、システムは我々が所有し、EC事業者さんとはライセンス契約し、『利用』していただく形になります。間に入って開発していただくSIerさんは『役務提供』になるわけです。すでにご利用いただいている数社の大手企業さんとも、この新しい契約スタイルで取り組ませていただいています」

株式会社クロスワープ 代表取締役社長
山﨑真吾さん

 サービス提供の流れとしては、PaaSサービスを提供するCommerbleとEC事業者の間に、開発を請け負うSIerが入るというもの。「Commerble EC PaaS」の採用は、間に入るSIerが入ることも多いが、事業者の情報システム部門が決めることも多いという。

 「実際にECを運営される方たちの多くは、『クラウドってよく知らないけどいいらしいね』とか『コストが下がるんでしょう?』というくらいのご関心ですが、情シス部門の方たちは、最近のO2O施策や基幹システムとの連携等に取り組む際、従来のやりかたでECサイトを構築・改修して、失敗を経験されていたりしていて、かなり真剣に新しいやりかたを模索していらっしゃいます。システムはビルと同じで、必ず建て替え需要があるものです。その建て替えを担当している技術者の方たちに愛してもらえるサービスを作らなくてはと考えていました」

 これから先、新たなECの形が見えてくれば、共通のモジュールを作り、オープンに提供していくという。「Commerble EC PaaS」の先にあるのは、わかりやすく、進化し続けられるECサイトの基盤を提供することだ。

 「正しいECサイトの作りかた」は事業者によって異なるとはいえ、これまであまりにもブラックボックス化していたのではないか。「Commerble EC PaaS」のようにオープンなサービスが増えることで、EC業界の技術向上・発展につながっていくことを期待したい。

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/1689 2023/07/07 16:47

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