ECサイトを運営するときには、ユーザーにとっての利便性に目を向けながら、最適な利用環境を整えることが大切です。そのなかでも、特に重視しておきたいのが「決済方法」です。代金のやりとりが行われる重要な場面なので、セキュリティ面はもちろん、手続きの簡単さや負担の少なさも大切なポイントとなります。
今回はEC決済の決済方法の種類や特徴、ユーザー満足度を高めるための考え方について詳しく見ていきましょう。
EC決済を複数用意しておくべき理由
ECサイトにおいて重要とされる項目にはさまざまなものがあります。そのなかでも、ユーザーの利便性に直接つながる「決済方法」は、ECサイトの品質を左右するポイントといっても過言ではありません。
ここではまず、複数の決済方法を用意しておくべき理由について解説します。
さまざまな決済方法を組み合わせる必要がある
ECサイトにおける決済方法について、まずは経済産業省が公表している「電子商取引に関する市場調査」(2019年4月)をもとに具体的なデータを見てみましょう。
- クレジットカード決済:66.1%
- コンビニ決済:30.9%
- 代引き決済:26.9%
- 銀行決済:23.7%
上記の結果を見る限り、クレジットカード決済が利用される割合は多いものの、その他の決済方法も一定数選ばれていることがわかります。
1種類の決済方法だけではカバーができず、複数の決済方法を用意しておく重要性は高いと考えられるのです。
複数の決済方法を用意しておくメリット
複数の決済方法を用意しておくことで、機会の損失を減らすことができます。
ECサイトのユーザーにとって、普段から使用している決済方法が利用できないことは購入を取りやめてしまう大きな原因となります。ほかのECサイトでも購入できる製品なら、新規で決済の手続きを行うよりも、使い慣れた決済方法が利用できるサイトへ移ってしまう可能性が高いのです。
また、ユーザーの満足度を高められる効果も期待できます。 ユーザーが抱くECサイトの評価基準には、「取扱商品の数や種類」「サイトの使いやすさ・見やすさ」などとともに、「決済方法との相性」が挙げられています。
そのため、複数の決済方法を用意しておくことは、ユーザーにとっての利便性の高さにつながるのです。
7種類のEC決済方法
ECサイトの決済方法について、ここでは7つの種類に分けてそれぞれの特徴を紹介します。
1. クレジットカード決済
ECサイトではもっとも多く利用されている主要な決済方法です。顧客にとっては「決済手続きがスムーズ」「ポイントなどの特典が設けられている」といったメリットがあり、設置の優先順位はもっとも高いといえます。
また、代金未回収の場合はクレジットカード会社が対応してくれるので、事業者側にとってはリスクを抑えられる点も大きなメリットです。一方、個人情報の取り扱いなど、セキュリティ対策には細心の注意を払う必要があります。
2. コンビニ決済
コンビニ決済は、商品の購入後にコンビニのレジや端末で支払い手続きを行う方法です。自宅や職場に近いコンビニで決済できるため、ユーザーにとっての利便性が高く、クレジットカードを持っていない人でも利用できるのが大きなメリットといえます。
また、入金を確認してから発送できるので、代金未回収のリスクがないのが特徴です。
3. 銀行振込
商品の購入後に、事業者が指定する金融機関の口座に代金を振り込んでもらう方法です。振込を確認してから商品が発送される仕組みなので、あとから請求がくる決済方法とは異なり、安心感を覚えるユーザーも一定数います。
ただし、オンライン口座がない場合は銀行まで出向く必要があり、金融機関によっては手数料がかかることもあるので、ユーザーに負担がかかりやすい決済方法ともいえます。また、入金の消込作業が必要になるため、事業者にとっても手間がかかってしまう点はデメリットといえるでしょう。
4. 代金引換決済
代金引換決済は代引きとも呼ばれ、商品が届いた際に配送会社に代金を支払い、商品を受け取る方法です。 ユーザーにとっては外出する手間を省ける点がメリットである一方、万が一受取拒否をされた場合には、事業者側に送料や配送にかかった工数などのコスト負担が生じてしまいます。
5. キャリア決済
携帯電話料金とECサイトで購入した商品代金をまとめて支払えるサービスで、クレジットカードを持っていなくても決済できるのが利点です。また、本人認証手続きも比較的に少ない工数で行えるため、ユーザーにとって利便性の高い決済方法といえます。
事業者としてはクレジットカード決済と比べると手数料が割高なので、コストをきちんと把握したうえで導入しましょう。
6. 後払い決済
商品の発送後に請求書を送付して、コンビニや金融機関などで代金を支払ってもらう方法です。ユーザーにとっては、商品の状態を確認してから支払いが行えるので安心感があります。
一方、事業者側は、ユーザーが代金を支払わなかった場合のリスクについて検討しなければなりません。基本的には代金回収業務を外部へ委託することとなりますが、その運用コストについてもきちんと把握しておく必要があります。
7. ID決済
楽天ペイやAmazon PAYなどの外部サイトと連携して料金を支払ってもらう方法です。ユーザーは新たにクレジットカード情報や個人情報を入力する必要がないため、スムーズに買い物できます。
また、事業者側も個人情報を自社サーバに保存せずに済むため、セキュリティ面のリスクを軽減できます。ID決済にはさまざまな種類があるので、導入する際には自社サービスとの相性などを慎重に検討することが大切です。
導入する決済方法の選ぶコツ
できるだけ多くの決済方法を用意しておくほうが、ユーザーの利便性が高まるのは確かです。しかし、それぞれ運用コストがかかるので、実際にはある程度絞り込む必要があります。
ここでは、決済方法を選定する際のコツについて見ていきましょう。
自社のターゲットに合わせて選ぶ
ひとつ目のポイントは、「自社のターゲットとの相性」です。
たとえば、10~20代の若年層をターゲットとしているならば、クレジットカード決済よりも、コンビニ決済や代金引換決済を選ぶほうが利用してもらいやすくなります。 反対にシニア層を対象としたサービスであれば、古くから使われている銀行振込にも対応していたほうが、安心感を覚えてもらいやすくなります。
とはいえ、基本的にはクレジットカード決済の利用者が多いので、クレジットカード決済を主軸に置きながら、+αでどの決済方法が適しているかを検討しましょう。
運用コストとのバランスを考えて選ぶ
どのような決済方法を選ぶにしても、代行会社などに支払う手数料が発生するので、運用コストとのバランスも考慮することが大切です。たとえば、クレジットカードであれば商品代金の3~5%、コンビニ決済は1件あたり150~300円、代金引換決済は1件あたり300円が目安とされています。
利用頻度とトータルコストを考えたうえで、最適な決済方法を絞り込みましょう。
自社の商材との相性を踏まえて選ぶ
自社が取り扱っている商材との相性も重要な判断基準となります。
たとえば、家具やブランド商品といった高価な商品を取り扱っている場合は、支払い回数を自由に選べるクレジットカード決済の重要性が高くなります。
一方デジタルコンテンツなどの場合は、おもな利用媒体を考慮するとキャリア決済との相性が良いといえるでしょう。
EC決済の会社を選ぶときのポイント
EC決済方法の選択においては、どの決済会社を利用するかも重要なポイントとなります。最後に、決済会社を選ぶうえでおさえておきたいポイントを見ていきましょう。
自社のECシステムに対応しているか
ECシステムの構築方法には、大きく分けてASPとECパッケージの2種類があります。まずは利用しているシステムに決済会社が対応しているかを確認しておくことが大切です。
特にプラットフォームをレンタルするASPでは、運営コストを抑えられるのがメリットである反面、決められた提携先としか外部連携できないケースも少なくありません。あらかじめ対応状況を確認しておきましょう。
また、パッケージであっても、標準化されていない決済方法を選ぶときには改修コストが発生します。そのため、費用対効果をよく見極めながら依頼先を検討することが大切です。
初期費用や運用コストは問題ないか
決済システムを導入する際は初期費用がかかります。また、運用していくためには、月額手数料と決済手数料のランニングコストが毎月発生するので、コストを事前にシミレーションしておくことも重要です。
複数の決済会社を比較する場合には、ある程度の期間にわたって運用し続けることを想定して、長期的な計算を行っておくとよいでしょう。
サポート体制は充実しているか
決済会社とは長く付き合っていくことになるので、きちんとサポートを行ってくれる会社であるかどうかも見極める必要があります。ECサイトは年中無休で稼働しており、決済の段階で何らかの不具合が生じることも珍しくありません。
対応に遅れが生じれば、EC運営者にミスがなかったとしても信用を損なってしまうリスクがあるので、決済会社のレスポンスの速さや対応の的確さもチェックしておきましょう。
まとめ:EC決済の種類や特徴を踏まえて自社に合ったものを選ぼう
ECサイトの決済方法においてはクレジットカードが主流とされているものの、その他の方法が利用される割合も決して低くはありません。ユーザーにとっての利便性を追求するうえでは、複数の決済方法を導入することが大切です。
ただし、決済方法にはさまざまな種類があり、メリット・デメリットはそれぞれで異なります。 自社のサービスや製品、主要なターゲット層との相性を考慮しながら、最適な決済方法を見極めましょう。