AI検索の最大リスクは「自社の評価」を誰も知らないこと
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずはご自身とsecondz digitalについて教えてください。
板井:私自身はエンジニア出身で、PKSHA Technology等を経て、2019年にsecondz digitalを創業しました。当社は「AIネイティブカンパニー」への変革を支援する会社で、マーケティング領域からセールス領域まで、お客様の顧客接点をオンライン・オフライン問わずAIで高度化していくことを目指しています。
GREE、エン・ジャパン、PKSHA Technologyを経て2019年に創業。2024年11月にジャフコ グループから約1.5億円を調達
板井:そして、現在は「AI検索最適化(AEO:Answer Engine Optimization)」に注力し、企業の対策を支援するAIエージェントの開発・提供を行っています。
MZ:「AEO」「GEO」「LLMO」など、AI検索の最適化を意味する言葉が生まれています。AI検索最適化のためのプロダクトを開発されているsecondz digitalとして、現在の状況をどのように分析されていますか。
板井:マーケティングコミュニケーションの在り方そのものが変わる、大きな変革の入口に我々は立っているのではないでしょうか。
市場の動きを見ても、AI検索の普及スピードは極めて速く、2027年には2人に1人がAI検索を利用すると言われています。国内でも、サイバーエージェント社の調査(2025年10月実施)によれば、10代の約60%、20代の約40%が、日常的な検索行動の中でChatGPTを利用した経験があるとされています。
MZ:AI検索によって生活者の行動が変容することで、マーケティング面でのリスクやデメリットはあるのでしょうか。
板井:最大のリスクは「情報のブラックボックス化」です。当社のお客様でも、AI検索の影響で自社サイトのトラフィックが2~3割減少している企業もあり、「AIに聞くが、参照元サイトには訪れない生活者」は増加しています。
つまり、企業の関与していないブラックボックス内で、意思決定が進められてしまっているのです。もし、AIが自社について誤った情報を伝えていたり、競合他社ばかりを推奨していたりしても、それを把握できなければ対策の打ちようがありません。このブラックボックスは静かに拡大を続けており、中長期的には事業判断に影響を及ぼす可能性もあります。
「何か手を打たなければならない」という予感は正しい
MZ:現状に不安や焦りを感じているマーケターも多そうです。
板井:みなさんが感じる、「何か手を打たなければならない」という予感は正しいでしょう。かつてスマホやSNSが登場し、グロースする企業とそうでない企業の明暗が分かれた時と同様のことが、より広範囲で起きようとしています。
MZ:どのような変化を想定されていますか。
板井:自分専用の「AIエージェント」を所有し、検索行動のみならず、コマース、カスタマーサービス、求職活動までもエージェントを介して行う「エージェントシフト」が起こると考えています。
既に、購入代行ができるAIブラウザが登場したり、ChatGPT内で個別アプリに接続しサービスを受けられる「Apps in ChatGPT」がリリースされたりと、実用化に向けた段階に入りつつあります。特に「Apps in ChatGPT」は、当社へも非常に多くの開発相談をいただいている注目領域です。
これにともない、生活者の購買行動モデルも激変するでしょう。これまで主流だった「自力で探索し、比較・検討を繰り返す」というモデルは、人間にとって非常に認知コストが高い行動でした。そこで当社が提唱するのが、「Delegation Model(委譲モデル)」です。
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板井:面倒な「探索」と「評価」をAIエージェントに委譲(デリゲート)することで、人間は「納得と最終決断」だけに集中できるようになります。その結果、AIが商品選定を担い、人間は情報処理の負荷から解放されるような世界が見え始めています。

