株式会社アダストリアは、2024年10月23日に公式ECサイト「.st（ドットエスティ）」を、オープン化戦略の加速に向け「and ST（アンドエスティ）」に名称変更した。また、新会社・株式会社アンドエスティを設立し、2024年12月1日付で「and ST」事業を同社に移管する。アンドエスティの代表取締役社長には、アダストリアの代表取締役社長 木村治氏が就任するとのこと。
新会社の設立にともない、アダストリアは2024年10月23日に事業戦略説明会を実施した。説明会では、木村氏が「2030年までに『and ST』の流通総額1,000億円を目指す」と語ったほか、各領域の責任者が今後の成長戦略として「モール＆メディア事業」「プロデュース事業」「ソリューション事業」の3つの軸をそれぞれ共有した。
モール＆メディア事業
アンドエスティの取締役 CMO 田中順一氏は、今後の事業拡大に向けた注力ポイントに「商品カテゴリーの拡張」「and STストア（実店舗）」「会員サービス」の3つを挙げ、目指す姿を次のように述べた。
「当社が考えるECは『エンターテインメントコミュニティ』です。それを、ブランド同士やお客様とのつながりにより実現します」（田中氏）
各ポイントの具体的な取り組み内容は次のとおり。
商品カテゴリーの拡張
これまでアダストリアグループが展開していなかったカテゴリーも含めて、出店ブランド数を拡大する。その中で、同グループと他社のインフルエンサースタッフが一緒にライブ配信をするなど、協業の相乗効果を高める販売方法を見出していくという。なお、2025年春には洋菓子などを販売する「DEAN & DELUCA」も出店予定となっており、アンドエスティは食品カテゴリーの拡充にも注力する考えを示している。
and STストア
実店舗「.stストア」を「and STストア」に名称変更し、既存の22店舗から出店数を拡大する。2025年春には、旗艦店が新たにオープンされる予定。同店舗では、OMO施策の検証などが行われる。
会員サービス
「and ST」がこれまで連携していた「dポイント」に加えて、2025年秋より「楽天ポイント」の利用も可能となる。ユーザーは「and ST」ポイントと併せて計3種類のポイントを貯められるようになる。こうした会員サービスにより得られた顧客データは、出店ブランドの事業成長などに活用される。
プロデュース事業
アンドエスティの取締役 CBOを務める小林千晃氏からは、ブランド同士のコラボレーションの可能性が語られた。「and ST」への出店による販路拡大にとどまらず、商品企画・販促施策・クリエイティブ・店舗運営など、各ブランドのニーズに合わせたプロデュース支援を行っていくとのこと。
具体的な例として、アダストリアグループが商品開発を手掛けた「PEACH JOHN」のアパレル商品が、2024年10月30日より「and ST」で発売される。協業の背景について小林氏は「当グループは、今までカジュアル衣料を中心に販売してきた。ランジェリーを取り扱う『PEACH JOHN』との協業により、カバーできる領域が広がる」と説明した。
ソリューション事業
アンドエスティは「and ST」の成長戦略の一つに、新たな経済圏の創造を掲げている。その一環として、同社の取締役 CTO 櫻井裕也氏は「『and ST』とユーザーの口座を連携することで、便利かつお得にポイントを貯められる仕組みを作る」と述べ、デジタルバンク「みんなの銀行」との協業を発表した。今後「and ST」において、「みんなの銀行」を通じた口座決済サービス、また貯めたポイントの現金化など活用の多様化を実現するとしている。
なお、説明会では他社プラットフォームとの差別化に関する質問が、報道陣より投げかけられた。それに対して、アンドエスティの取締役 CSO 田淵淳也氏は次のように回答している。
「出店料などの経済性やプラットフォームの利便性の面で、先行事例を超えることは難しいです。そのため、実店舗を通じてお客様と直接コミュニケーションを取ってきた強みを生かし、まずは『楽しいほうのプラットフォーム』を目指します。また、出店ブランドに対しても、マーケティングを通じた支援という価値を提供していきます」（田淵氏）
