SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

最新イベントはこちら!

ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

10年続くブランドになる

「Minimal - Bean to Bar Chocolate -」の10年 課題と変化を振り返る


 初めまして。「Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)」の代表 、山下と申します。業界未経験の素人から、チョコレートの企画・製造・販売を手がけるブランドを立ち上げ、2024年12月で10年が経過します。ベンチャー企業の生存確率が、最初の10年間で10%を下回るともいわれる中、比較的初期投資や製造コストがかかる製造業で起業したこの10年は、決して楽な道のりではありませんでした。本連載では、ブランド成長におけるこれまでの課題や変化から、10年続くブランド運営のポイントを全6回にわたって考察。第1回は、前編・後編に分けてこれまでの歩みを振り返ります。

自社工房でカカオ豆から製造する「Bean to Bar」

 2014年12月1日に、「Minimal - Bean to Bar Chocolate -」というチョコレートブランドをローンチしました。2024年12月で、10周年を迎えます。本連載では、業界経験がなく素人だった私が、ブランドを立ち上げてから10年を一つの周期と捉えて、「10年生き残り、続けていく」ためのエッセンスについて執筆することになりました。Minimalが体験した実例をもとに、「10年後に生き残るブランド」について考えていきます。

 Minimalは、「Bean to Bar(ビーントゥバー)」というチョコレート製造のスタイルを採っています。カカオ豆から板チョコレートになるまで、自社工房で一気通貫して製造する新しいスタイルです。「Bean」はチョコレートの主原料であるカカオ豆、「Bar」は板チョコレートを表しています。

 Bean to Barはチョコレートの世界トレンドとして、この10年ほどの間に日本でも注目されるようになりました。商品企画から製造、そしてお客様に直接販売する点では、D2Cともいえます。

「Bean to Bar(ビーントゥバー)
クリックすると拡大します

  Bean to Barは、製造と販売を両方含めた、D2Cによるブランド運営という新しいものでした。10年近くブランドを継続する中で感じた課題は多くありますが、連載初回は特に大きな3つを取り上げます。

課題1:ものづくりの質向上の追究と、相反する量への挑戦

 私はブランドの構成要素を考えるときに、2階建ての建物と見立てています。

 2階建ての1階部分は土台であり、ブランドを展開する際の外してはならないベーシックな要素です。2階部分が、展開する領域における差別化要素、つまり類似の競合ブランドとの違いを明確にする部分です。

 私が約10年間ブランドを運営してきて感じたのが、意外に多くのブランドが2階の差別化要素を意識しすぎて1階の土台を疎かにしていることです。建物に見立てて考えると、1階の土台部分がしっかりしていなければ、2階がどれだけリッチになってもくずれてしまいます。

 では、食ブランドの1階部分は何か。それは、“おいしさ”でしょう。世の中に絶対的な“おいしさ”の指標があるわけではないですが、食ブランドとして確実に外せない部分です。

 Minimalの価値のベースにあるのは、提供する商品サービスです。ここで商品サービスと書いたのは、商品であるチョコレートと、それを食べる前後の体験サービスまで“おいしさ”に含めて考えているからです。

 日本のチョコレート市場は、年間5,750億円(全日本菓子協会推定)といわれています。お菓子カテゴリーの中でも、特に大きな市場です。ただ、ご存じのとおり、その市場はレッドオーシャンといっても過言でないほど、多くの競合がしのぎを削っています。

 約10年前にまったくの無名から始まったMinimalですが、優先順位の1番高い課題を“おいしさ”の追求、つまり“ものづくりの質向上”と明確に位置づけて経営してきました。ブランドを立ち上げるとき、もちろんコンセプトとマーケティングは非常に重要です。しかし、あえてその優先順位を2位としています。「10年続く」につながりますが、ブランドが成長し続けるためです。

 マーケティングの観点から競合と差別化するのも非常に重要で、欠かせない要素です。ただし、すべての戦略は必ず模倣されます。だからこそ、根幹の技術(ものづくりの質)を追求し続ける組織にするべきだと考えています。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
“おいしさ”を生む3つのプロセス トライ&エラーで磨き込む

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
10年続くブランドになる連載記事一覧
この記事の著者

Minimal - Bean to Bar Chocolate - 代表 山下貴嗣(ヤマシタ タカツグ)

カカオ豆の選定からチョコレート製造まで一貫して手掛けるクラフトチョコレートブランド「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」を設立。東京都渋谷区富ヶ谷への初出店を機に都内に4業態4店舗を出店。赤道直下のカカオ農園に自ら足を運び、100%フェアトレードでの買付と、毎...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事をシェア

ECzine(イーシージン)
https://eczine.jp/article/detail/14305 2024/04/02 08:15

Special Contents

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング