D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、メーカーやブランドが卸売業者や小売業者を介さず、直接消費者に商品を販売するビジネスモデルを指す。
D2Cという単語が生まれたきっかけは、2000年代~2010年代のアメリカにあるといわれている。1990年代から普及していたインターネットを通じたオンライン販売を使い、顧客への直接販売を実現するスタートアップが次々と誕生し、「Warby Parker(ワービーパーカー)」「Glossier(グロッシアー)」「Allbirds(オールバーズ)」「Casper(キャスパー)」など、多くのユニコーン企業が誕生した。なお、こうした動きには2004年にカナダで創業し、2006年よりカートサービスの提供を開始したECプラットフォーム「Shopify」の存在も関係すると考えられている。
日本では、販路の開拓や流通網の整備などにコストがかかることから、多くの場合、ものづくりに専念するメーカーと流通・小売販売を担う事業者は別々に存在していた。しかし、1900年代よりアパレル業界にてSPA(製造小売業:Speciality store retailer of Private label Apparel)事業者が台頭したり、2000年代以降、Amazonや楽天市場など容易に販売を開始できるECモールの普及により、メーカーが小売販売に参入したりと、こうした境界や役割分担は曖昧になりつつあった。
そんな中、日本でも2010年代以降、「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」「BULK HOMME(バルクオム)」「スナックミー」「BASE FOOD(ベースフード)」など、直販チャネルを起点に事業を展開するブランドが複数台頭。アパレル、化粧品、食品など多様なジャンルのブランドが登場し、2010年代後半には「D2Cブーム」ともいわれるほどになった。
D2Cの魅力は、自社で直接販路を有することにより、消費者に商品を提供するまでの仲介コストを抑え、それらを価格に反映できる点にある。また、問屋や小売店を挟まないため、仕入れや棚取りの交渉などをする必要がなく、生産後速やかに消費者へ商品を販売できる点もメリットだといえる。マーケティング施策を顧客へダイレクトに行える点や、消費者からのフィードバックをダイレクトに受け取り、迅速なPDCAサイクルを回して顧客満足度向上に取り組める点も利点であり、これらが実現可能となったのはSNSの台頭が関係すると考えられている。
なお、2020年代に入り、米国・日本ともにD2Cブランドの実店舗・小売進出が進んでいる。ブランドの認知向上、顧客層や事業規模拡大の過程ではECサイトを起点にしながらもリアルチャネルを用いた取り組みが欠かせないとされ、トライアルとしてのポップアップストア需要も増加。今後、D2Cブランドを立ち上げたり、メーカーのD2C化を推進したりするには、EC・デジタル起点、顧客起点といった特色はそのままに、OMOの視点が必須になるといえる。
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