SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

最新イベントはこちら!

ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECホットトピックス

合意ベースのファーストパーティデータを活用、SAPの幹部に聞く「SAP C/4HANA」の現在

 顧客体験(CX)が注目を浴びているが、より良い体験を実現するカギになるのはやはりデータ管理である。SAPでは、2017年に顧客ID情報の統合・活用の基盤「GIGYA」を、2019年1月にエクスペリエンスマネージメント「Qualtrics」を買収し、CRMアプリケーションスイート「SAP C/4HANA」を強化している。最新のデータ管理と活用について、SAPのふたりに聞いた。

ファーストパーティデータがSAP C/4HANAの差別化になるか

 SAPが「SAP C/4HANA」としてマーケティング、コマースなどのクラウドをスイートにしてから1年、買収したQualtricsの感情データが加わり、さらにパワーアップしそうだ。差別化はファーストパーティデータの活用、データ管理クラウド「SAP Customer Data Cloud」を利用して匿名顧客のプロファイルを構築できるという。

 SAP Customer Data Cloudを中心に、SAP Customer ExperienceでSAP Customer Data Cloud担当ゼネラルマネージャーを務めるBen Jackson(ベン・ジャクソン)氏、SAP Customer Experience事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクターを務める阿部匠氏に話を聞いた。

Ben Jackson氏(右)と阿部匠氏(左)。
Jackson氏はCustomer Data Cloudの土台技術となるGigya幹部を務めていた。

――SAP C/4HANAを1年前にローンチしました。これまでの成果をどう見ていますか? 現在の取り組みは?

Jackson氏 SAP C/4HANAはスイート全体で一貫した属性を持っており、全体のUIを標準化する作業を進めているところだ。C/4スイート全体のユーザー体験を一貫性のあるものにしていく。

5月には「SAP C/4HANA Foundation」を発表した。SAP C/4HANAの各クラウドの管理を単一の管理コンソールから行うことができるもので、共通のアイデンティティと役割の管理ができる。スイートの拡張としては、「SAP Cloud Platform Extension Factory」を活用してSAPアプリケーションを拡張できる。パートナーや顧客はこれを利用して新機能を開発でき、シームレスで一貫性のある形で拡張できる。

――SAPはMicrosoft、Adobe Systemsと「Open Data Initiative(ODI)」を発表しています。こちらの取り組みの進捗は?

Jackson氏 とくに大企業を中心に企業はさまざまな技術を利用している。これらの技術はビジネス上の価値を提供するだけでなく、データの収集も行っている。ODIは、あるベンダーの技術で集めたデータを別のベンダーの技術に移動させるのを容易にする。これにより、データの活用が進むことを狙う。

具体的な取り組みは明かせないが、2社と定期的に会っており、さまざまな取り組みを進めている。顧客とも話をしている。

コンセプトとしては、システム間でのデータ共有という点でSAP C/4HANA Foundationと同じになる。SAP C/4HANA FoundationではExtension Factoryがそれを強化する製品になる。

阿部氏 SAPはすべてを提供するアプローチをとることが多いので、Open Data Initiativeは典型的なSAPの動きと異なるところは面白いと思う。先に、Accentureなどビジネスコンサル系の企業が加わったことが発表されており、今後の発展に期待してほしい。

――SAPが買収したQualtricsとの統合でどのようなことが実現するのでしょうか?

Jackson氏 Qualtricsは体験データを得られるもので、この買収はデータの重要性を示すものとなる。

Gigyaは2017年にSAPに買収された後、「SAP Customer Data Cloud」としてSAP C/4HANAの1クラウドとなった。このSAP Customer Data Cloudは、マーケティングにおける“正しいデータ”の課題を解決する技術だ。マーケティングのためのツールはたくさんあるが、最大のメリットを得るためには正しいデータが必要になる。たとえばマーケティングオートメーションでパーソナライズされたコンテンツを配信するためには、組織内でデータがサイロ化されていてさまざまなチャネルからの顧客データを1箇所に統合できない場合は、最大のメリットは得られない。

Qualtricsは顧客体験ツールで正しいデータの収集と活用を実現するものとなる。Qualtricsを利用することで利用者や顧客からダイレクトなフィードバックが得られ、これをサービス、マーケティング、コマースなどのアプリケーションで活用できる。すでに部分的に統合が始まっている。

阿部氏 SAPはトランザクションデータにフォーカスしており、顧客を識別するという点では既知の顧客にフォーカスしている。マーケティングでは、匿名顧客にフォーカスして既知の顧客にする必要があり、Gigyaの技術はこの問題を解決できる。さらにQualtricsの技術により、企業がトランザクションデータを得る際の体験についてのデータが得られる。

Jackson氏 それはいいポイントだ。匿名から既知顧客にすることは重要で、できるだけ簡単に、顧客に自分を特定してもらう必要がある。カスタマージャーニーの初期に名前とメールアドレスなどわずかだがデータを収集する。SAP Customer Data Cloudを利用して、連続的に顧客のプロファイル構築を進めることができる。ある程度の関係を構築した後、トランザクションが発生したり、ウェブサイトに戻ってきたなどの適切なタイミングで、追加のデータを求める。その後、顧客体験に関連したデータを求める……こうやってプロファイルを構築する。そして、これをオペレーショナルデータにリンクできるという点が重要だ。これにより、顧客へのリッチなビューが可能になるからだ。

――ファーストパーティデータがSAP C/4HANAの差別化になるということ?

Jackson氏 SAP Customer Data Cloudは合意ベースで顧客のファーストパーティデータを収集できる。欧州の「EU一般データ保護規則(GDPR)」、米カリフォルニア州の「カリフォルニア州消費者個人情報保護法(CCPA)」などの法律があり、もっとも価値のあるデータは、顧客が合意ベースで提供したデータであるという認識が広がっている。顧客も、“マイアカウント”のように、セルフサービスで自分の情報について設定したり確認できるページを求めるようになった。

SAP C/4HANAの大きな優位点も、このデータを収集してマーケティングに活用できる点にある。大手マーケティングクラウドベンダーで、この機能を持つところはほとんどない。SAP C/4HANAでは、顧客の合意を得て規制を遵守した形で、コミュニケーションチャネルの好みなどを知ることができる。このような合意管理は、競合にはない機能になる。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
コンシューマーが企業のデータ管理に求めることとは

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
ECホットトピックス連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事をシェア

ECzine(イーシージン)
https://eczine.jp/article/detail/7100 2019/10/21 07:00

Special Contents

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング