成長率の開きは15~25%にも データ活用で伸びる組織の傾向
McKinsey&Company社が2022年1月に発表した調査によると、データを中心とした営業活動を行っている企業はそうでない企業と比較して、15~25%成長していると言う。大森氏はSalesforceのクライアント企業に目を向け、データを活用しながら成長する組織の傾向を次の3点にまとめた。
- 顧客データを活用し、エンゲージメントとロイヤルティを促進
- 従業員の生産性と意思決定を向上させるためにAI投資を実施
- カスタマーエンゲージメントに対して部門ごとの最適化ではなく、全社レベルでアプローチを実施
これらを踏まえ、大森氏はデータの活用がロイヤルティやエンゲージメントの向上を促進する理由を説明すべく提示したのが、次の図だ。
多くの企業では、CRMプラットフォーム上に蓄積した顧客情報を属性ごとにセグメントし、メール配信や広告表示といった「単発のコミュニケーション」を行っている。ここに複数のデータをつなぐことで実現可能となるのが、「連携したキャンペーン」だ。たとえば、購入データと連携して「過去30日以内に購入した顧客向け」のセグメントを作成するなど、より顧客の状態や要望に合った訴求が実現できる。
ここに「リアルタイムのモーメント」を付与できれば、さらに可能性は広がる。「該当ページを複数回閲覧した顧客に、来訪時に限定オファーを提示する」といった「瞬間」をとらえた提案は、顧客の欲求を満たす上でも効果的と言えるだろう。Salesforceでは、こうしたパーソナライゼーションを「ハイパーパーソナライゼーション」と呼び、クライアント企業の手助けを行っている。
しかし、ハイパーパーソナライゼーションの実現は決して容易ではない。なぜなら、どの企業も社内に大量のデータがあふれているからだ。
Salesforceの調査によると、平均的な企業が業務で活用するアプリケーション数は900にも及び、そのうち連携されているものはわずか3分の1という結果が出ている。なお、カスタマーエクスペリエンスに関与するシステム数は平均35。これらの連携が十分に進んでおらず、データの分断に悩まされるテクノロジー責任者は89%にも上ると言う。
データの分断は、パーソナライゼーションの実現を阻むだけでなく、社内の生産性をも下げてしまう。Salesforce Researchが2021年に発表した「マーケティングインテリジェンスレポート」によると、87%がデータ活用に向けた前処理に毎月数日から数週間を費やしていながら、パフォーマンスを毎日測定、把握している人はわずか32%となっている。
「各社の最大の課題は、パフォーマンスを測定する仕組みとそれを可視化するレポート機能が分断していることと言えます。分断しているがゆえに、リアルタイムの可視化や迅速な施策の実現が難しくなっているのです」(大森氏)