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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

今から始めるBtoB EC 成功の心得

BtoB ECの実現には「課題の見える化」が必須 3社の事例から学ぶ導入前にやるべきこと

 身のまわりのあらゆる取引がデジタル化する中、企業間取引のEC化が注目を集めています。ジェーエムエーシステムズの加納信太郎さんが、BtoB ECで成功するための心得を伝授するこの連載では、ここまで実行に移すためのHOWTOをお伝えしてきました。最終回となる第3回は、同社が支援したBtoB ECの導入事例を紹介します。

 第1回、第2回の記事にて、BtoB ECに取り組む際に、キーパーソンの判断や決定がなかなか得られない、もしくは課題が多くなり進まないといった多くの企業の実情をお伝えしました。今回は、そんな状況に対して当社が何をしたのか、「攻めの姿勢」として何を決め、実行に移していったのかを、事例を交えてご紹介します。BtoB ECの企画の検討を進める一助になれば幸いです。

卸売業のBtoB取引 EC化に取り組むA社の事例を紹介

 最初にご紹介する事例は、日用品の卸売業を行う企業A社の事例です。A社は、小売業者への卸売をメイン事業としており、受注形態は、電話、メール、FAXが中心。営業活動についても、自社の営業担当者が担当するそれぞれの小売業者に対して行うといった、よくある事業形態の企業です。

 ECサイトも、エンドユーザー向けにすでに構築しており、SaaSで提供されるECサイトサービスを利用していました。しかし、とくにマーケティング活動などは行っておらず、同サイトの存在を知っている人だけが、たまに使うようなサイトでした。

 当社には、「BtoB ECを意識したサイトを作りたいが、複雑な要素を含んでおり、オリジナルのECサイトを持つ必要があると考えている。しかし、オリジナルのECサイト開発に携わった経験がなく、何ができて、何ができないのかもわかっていない。今後、どう検討すればいいのか話を聞かせてほしい」という主旨で、ご相談をいただいたのです。

 まずは、詳細なヒアリングを行いました。ヒアリングの際には、構想とやりたいことを記載した説明資料を共有いただき、下記の要望と課題点をお預かりしました。

なぜA社はオリジナルのBtoB ECサイトを設けたいのか

  • 既存の電話、メール、FAXでの受注には限界があるため、業務を効率化したい
  • 転売などの対策も行いたい
  • 卸先の小売業者の販売網を強みとしているため、ECでの販売が小売業者にも還元できるような仕組みを設けたい

実現にあたっての課題点

  • オリジナルのECサイトをどう作ればいいのか、何を考えればいいのかがわからない
  • やりたい理由は明確だが、それをどう考えればシステムに落とし込めるのかわからない

 ヒアリングの結果、私たちはまず、以下の問題があると判断しました。

  1. 事業としての方向性は固まっているものの、課題とスケジュールの可視化がされていない
  2. 共有いただいた資料の中には、業務フローや業務ルールが明確になっておらず、実現の必要性があること、やりたいことの分類と優先順位づけができていない
  3. 社内に、システムそのものに明るい人材がいないため、システム構想が進んでいない

 当社は、まず初回のヒアリング結果を受け、以下の資料を作成しました。

業務フロー

 やりたいことを具体的にどう実現するのか検討があまり進んでいなかったため、「誰が何を使って、何をするのか」「A社の規定、もしくは販売上のルールとして必須条件がどこにあるか」を踏まえ、大まかな業務フローを描きました。

課題一覧

 現状の課題を可視化するとともに、「誰が決める課題なのか」「なぜ決まらないのか」を整理していただくための期限を設定しました。また、ECサイトを公開するまでに検討が必要な事項も洗い出しました。

今後のスケジュール

 A社が理想とするECサイトのリリース日程から逆算したスケジュールを作成し、その中でどのようなタスクが発生するのかを、図示しました。また、多くの課題を有していたため、現実的なスケジュールかどうか、どのくらいの早さで結論を出していく必要があるのかを共有しました。

 A社に対しては、1ヵ月間で全3回の打ち合わせを実施。検討の推進と課題整理を行いました。ヒアリング後に行った打ち合わせ2回で、新たな業務フロー、業務モデル、システム概要図を作成しています。それをもとに、ECシステムで実現する機能一覧や、課題に対する解決策や代替案の提示も行いました。

 こうしたサポートを行った結果、初期リリース時、ECサイト開設後の2段階に分けて導入する機能を決め、EC導入の構想を作成。全3回の打ち合わせの後は、導入方針、スケジュール、費用対効果を考慮した提案を行い、5ヵ月ほどでECシステムのリリースに成功しました。

 リリース後は、業務効率の向上や新規顧客増加を実現することができ、好調なスタートを切っています。その後も継続した支援を行い、構想に合わせた機能追加だけでなく、EC活用に関するご相談にも対応しております。直近では、新型コロナウイルス感染症の影響により、卸先企業の活動が停滞する中でも、受注を止めることなく活動を継続することができているとのことです。

 この事例を見ると、1ヵ月程度で検討が終わったことを心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に目で見て認識できる資料があると、理解のずれを防ぐことができ、検討や判断のスピードが格段に速くなります。「決めること」ができるようになり、スムーズに進捗した点は、当社が支援したことによる効果だと考えています。

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この記事の著者

株式会社ジェーエムエーシステムズ 加納 信太郎(カブシキガイシャジェーエムエーシステムズ カノウシンタロウ)

 ECソリューション部 部長  1999年にジェーエムエーシステムズに入社。金融機関の与信、DWHなどの構築に従事。流通・EC担当として多数のECシステム構築などを経て、2019年4月にECをトータルで支援するサービス「2nd STEP」をリリース。ECサイト構築だけでなく、顧客の業務課題への解決策を提案するコンサルティングや売上拡大のためのウェブマーケティングなどの支援も行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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