約90%がセラーの商品という企業も 欧米と日本の3事例を公開
Miraklのソリューションを通じて運営されているマーケットプレイスの平均成長率は、世界における自社ECサイトの約5~6倍だという。内藤氏は、どうすればマーケットプレイスを大きく成長させられるのかを示すために、三つの事例を紹介した。
一つ目が、欧州を中心に展開する家電量販店グループのメディア・マルクトだ。

同社は、複数国でマーケットプレイスを運営している。着目すべきは品ぞろえの内訳。たとえば、次の図のように、ノートパソコンでは5,684点のうち4,987点がセラーによる出品となっている。
「つまり、商品の90%近くがセラーの出品によって構成されているときもあるのです。この方法で、同社は急速に品ぞろえを増やし、売上を伸ばしています。また、実店舗のスペースを一時的にセラーに提供しているのも、成果が得られている理由の一つです」

また、米国・ニューヨークに本社を構える老舗百貨店のメイシーズも、2020年代前半からマーケットプレイスに投資を続けている。自社商品とのあわせ買いが増えている点が大きな特徴だ。これにより、平均購入単価は約50%増加している。

元々同社は、日本の百貨店と同様に、若年層へのアプローチを課題としていた。しかし、マーケットプレイスを通じて、若者から求められている品ぞろえを急速に拡充することで、若年層へのリーチに成功している。また、結果として実店舗への送客増も実現したという。
最後は、日本のニトリだ。これまで取り扱っていなかったカテゴリーの拡充に注力している。
「同社は、自社開発で在庫を抱えるだけでなく、良質なセラーによる商品を増やして、事業成長を加速する方針に転換したのです。今までは家の中で使用する商品がメインでしたが、今後は家の外も含めて“暮らし”を総合的に支える存在を目指しています。現在、ローンチに向けて取り組みを進めている段階です」

Miraklは、こうしたマーケットプレイス構築を支えるほかにも、セラーの商品カタログの統合を簡素化し、自動化する「Mirakl Catalog Platform」、リテールメディアで新たな収益源の確保を支援する「Mirakl Ads」、セラーが複数のマーケットプレイスに出品する際の最適化を図る「Mirakl Connect」といったソリューションをグローバルで提供している。
内藤氏は「これらには、顧客の行動特性を理解したAIを組み込んでいる」と強調した。これにより、単にマーケットプレイスを作る、もしくはマーケットプレイスに出品するだけでなく、その先のEC事業の成長を総合的にサポートする考えだ。
「Miraklが目指すのは、大手小売企業のサポートだけではありません。eコマースの仕組みを根本的に進化させたいのです。そのためには、小売企業をはじめ、ブランドやセラー、そして彼らをつなぐためのデータ管理やリテールメディアにAIを組み合わせた戦略が必要だといえます。当社のソリューションで、そんな未来を実現していきたいと考えています」