ECモールと何が違う? 小売の利益構造を変える三つの理由
マーケットプレイスの説明をとおして、「ECモールと何が違うのか」と疑問に思った人もいるだろう。内藤氏は、二つのビジネスモデルの違いについて「出品か出店か」と説明する。
セラーがECモールで商品を販売する場合は、「出店」という扱いだ。セラー主導で商品表示や販売ページの制作を行う。一方、Miraklが定義するマーケットプレイスでは、「出品」のコントロールを、同プラットフォームを運営する企業が担う。そのため、運営企業からすると商品の追加や変更に柔軟に対応できる点で、拡張性が高いといえよう。自社ECサイトの延長線上に、多様なセラーが自然に溶け込んでいくイメージだ。
アイリスオーヤマ株式会社の自社ECサイト「アイリスプラザ」、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の「WESTERモール」はその好例だ。どちらも見た目は独自の自社ECサイトだが、実は並んでいる多くの商品が外部のセラーによって出品されている。
「自社商品と比較しても、表示されるデザインが変わりません。いつもの買い物の中で、自然に外部セラーの商品が目に入る。そんな世界観を構築しています」

継続的にマーケットプレイスに投資を行い、成功を収めた代表的な事例が、米国のスーパーマーケット・ウォルマートだ。2009年に「Walmart Marketplace」を立ち上げ、2016年に事業拡大に向け注力し始めた同社。2019年には、セラー数2万8,000社、商品数4,500万点を超えた。
「欧米では、もはやマーケットプレイスをやるかやらないかという議論はしていません。ビジネスモデルとして機能するという前提のもとで、いかに成長させるかということに焦点が移っていると感じています。やみくもなマーケットプレイス運営ではなく、商品を絞るキュレーション型なのか、カテゴリーや商品を広げる開放型なのか。はたまた、ラグジュアリーな世界観を優先するのか、価格競争を重視するのか。自社独自の戦略が求められます」
ウォルマートの事例のように、ビジネスを大きく成長させる可能性を秘めているマーケットプレイス。その具体的な優位性について、内藤氏は三つのポイントを挙げる。
まずは「在庫リスクの軽減」だ。セラーが自らの商品を管理しているため、マーケットプレイスの運営企業は追加で在庫を抱える必要がない。そのため、新しいカテゴリーの商品を拡充するハードルが下がる。
また、二つ目の理由として「変化への対応力」がある。たとえば、特定の商品の注文が殺到した際、いち早くセラーに在庫を追加してもらえる体制を構築できる。また、仮にトラブルが発生した場合、迅速に該当商品やカテゴリーを非表示にするといった対応も可能だ。
三つ目の「データの集積」も大きなメリットといえる。多様な商品を取り扱うことで、幅広い顧客層からの購買データを集められる。運営企業は、このデータをもとに次の手が打ちやすくなるだろう。
内藤氏は「こうした仕組みが、日本における商習慣の課題の解決につながる」と語った。
「在庫リスクをお互いに軽減するために契約が複雑化するなど、現在の仕入れ販売には限界があります。また、小売企業が直接的な顧客データを獲得できない点も、大きな課題の一つです。これらを解決できるマーケットプレイスは、小売業界の利益構造を変えられると考えています。もちろん、新たな顧客へのリーチが増えるなど、セラー側にとっても様々なメリットがあります」