コロナ禍で大変だったのはバックヤードの環境整備
2004年に創業し、EC専業で事業を拡大し続けてきた家具・インテリアブランドの「LOWYA」。コロナ禍以前からEC市場の発展を肌で感じていたベガコーポレーションの浮城さんは、実店舗を主軸とする企業のオンライン販路開拓について、次のように予測していたと言う。
「リアルチャネルを主軸とする企業のEC化は、2020年代後半には進むだろう。LOWYAもそのタイミングまでには販路開拓や対策を講じる必要がある。そう考えていました。とは言え、リアルを主戦場とする企業の勢いが目ざましいというほどでもなかったので、対策を考えつつ様子を見ていたのが実情です」(浮城さん)
ところが2020年春以降、新型コロナウイルス感染症の影響により実店舗を思うように営業できない状況に見舞われ、世の中全体のEC化が加速。外出できない代わりにパソコンやスマートフォンでECサイトにアクセスし、ものを購入する顧客の数も増加した。
「LOWYAもリモートワークが日本中に普及すると同時に、パソコンデスク・チェアなど『コロナ特需』と呼ばれる商材の売上が伸びました。Instagramのフォロワー数も増加しましたが、いずれもコロナ禍以前から取り扱いや取り組みをしていたものなので、大きく運営方法を変えたわけではありません。
ただし、需要予測や発注の仕組みなど、バックヤード環境を変化に適応させるのは苦労しました。これらをより円滑に運営するために、この数年は投資を続けています。LOWYAは家具を主に扱っているため、需要の予測がずれるとものすごい勢いで倉庫使用率が上昇します。需要予測もまだAIに任せっきりにできる状態ではないので、提案された数値を見ながら担当社員が効率的に数量を算出する方法や、従来と同じ固定費で保管効率を上げるにはどうすべきか、といった課題解決に取り組んできました」(浮城さん)
このほかにも、海外から商品を仕入れた後の倉庫納品や、倉庫から顧客へ配送する際の輸送効率向上をシステムで実現するなど、SDGs観点からの取り組みも進めてきたLOWYAだが、同時に「実店舗を主軸として運営してきた企業がコロナ禍にどう動いているかは常に着目していた」と浮城さんは語る。
「市場調査として私はさまざまな企業の決算書に目を通しますが、2020年はネット専業企業の飛躍が目立ちました。すでにオンライン上に売り場を持っていた企業が既存リソースを活かし、好決算につなげたということでしょう。
一方で、実店舗主軸で運営してきた企業も2021年頃からリアルとオンラインの売り場を組み合わせた、いわゆるOMOの展開を進めている様子がうかがえます。いち消費者としても、コロナ禍で世の中全体のデジタル化が5年ぐらい進んだのではないかと体感していました」(浮城さん)
さらに浮城さんは、「このタイミングで一歩前に踏み出した企業・ブランドは、ECの可能性を感じたはず。たとえ失敗や不具合と直面しても、チャレンジを続けてきた企業・ブランドはノウハウが蓄積され、実店舗にお客様が戻りつつある今のタイミングで良い成果を得ている」とした上で、このように続ける。
「世の中全体が前倒しで動いているのであれば、LOWYAもリアル市場開拓を進めなければならない。そう考え、2022年から行動に起こすことにしました。同年9月にはイオンリテールへの卸売販売を開始し、11月にはb8ta Tokyo - Yurakuchoへの出品にチャレンジしています。リアルな売り場でLOWYAの商品はどう見られるのか、どのような展開方法が適切なのか、手探りながらも模索している状況です」(浮城さん)