「なぜ」を可視化するVoC 利活用はミクロ・マクロ双方の視点から
顧客目線のKPI設計や仕組み作りは、どのようにして実現できるものなのか。竹谷氏から、その起点となる目的や理由を考える上で欠かせない「顧客インサイトの指標化」を可視化した図が紹介された。
かつて、「いつ、どこで、どの商品を購入したか」という顧客行動を可視化・分析する上で行われてきたのが、基幹システムの購買・行動データによる定量分析だ。そういった分析の中心が顧客視点に寄り、かつ「1to1」や「パーソナライズ」という言葉が広がるにつれ、CRMにおいても「誰が」を示す顧客データが分析の主軸となり始めた。VoCでは、ひとりの顧客をさらに深く掘り下げ、その人が「どうして購入したのか」、「その商品を選んだ決め手」といった「なぜ」の可視化・分析を実現する。
「購入に至った背景や理由を可視化することで、新たな売上や契約に結びつけるだけでなく、解約の阻止やサービスのアップグレードに向けた施策検討にもつながります。これらを実現するには、従来型のコンタクトセンターで得たVoCのみならず、顧客から得たテキストなども含めた分析が必要です」(アビームコンサルティング 竹谷氏)
「これまで、顧客の『なぜ』はアンケートによる測定・分析が主流となっており、期待や要望といった声はなかなか拾い上げることが難しい状況でした。加えて、そういった意見を持つに至った理由や背景はさらに把握しづらく、顧客理解を深めることは困難であったと言えます」(NTTマーケティング アクトProCX 米林氏)
しかし、コンタクトセンターは以前から一連のカスタマージャーニーの中で「つまずきやすいポイントはどこにあるのか」、「回避・改善する方法はないのか」といったことを考えながら、コンタクトリーズン(顧客が問い合わせに至った理由)をとらえてきた。米林氏は、テクノロジーの進化と音声データの扱いの変化に触れながら、このように続ける。
「従来は非構造データとして分類され、人の力で分析していた音声データも、テクノロジーの進化により構造データとして扱われるようになりました。しかも、今はナイス(NICE)の技術を用いれば音声のテキスト化のみならず、感情を読み取ることも可能です。取得できる情報が増えたのであれば、分析しない手はないでしょう」(NTTマーケティング アクトProCX 米林氏)
ただし、日本ではまだまだコンタクトセンターのサービス品質よりも「つながったかどうか」といったアクセスの問題が重視される傾向にある。常につながる状況を作り上げるのは大前提として、つながった上で満足する体験を提供できたのか。目の前の顧客に満足してもらえる対応をするだけでなく、ほかの顧客から同様の問い合わせが発生しないよう、サービスを改善する術はないか。こうした検証と改善の積み重ねが、非常に重要だと言える。
部署をまたいだ情報連携によりつまずきやすいポイントが解消できれば、社内のみならず、グループ企業やパートナー企業をも含む「ワンチーム」として顧客に向き合う空気も醸成されるだろう。なお、データの統合と分析を進める上でグループ企業やパートナー企業を含む自社外の組織と個人情報を共有する場合は、データの取り扱いに注意が必要だ。システム構築時のみならず、業務プロセスにおいても改革や調整は欠かせない。