データ活用プロジェクトの成否は、「最初」と「人」で決まる
データ活用プロジェクトがうまくいった例として、下田さんは某通販企業が抱えていた課題のうち、「顧客の変化への対応」に取り組んだ案件を紹介した。
はじめの目的設定・施策立案のフェーズでは、優良顧客の遷移を分析することから始めた。実施したのは、いわゆるカスタマージャーニー分析だ。これにより、「F0~F2の転換率の改善がポイント」であり、「クーポンの有用性」も判明した。
まずはF0、F1をF2へ転換させるために、誰にどのクーポンをオファーするか。それを導き出すのに、自社サイトやアプリ内の行動データ、会員属性などの顧客データを用いて分析したところ、「初回時に購入したアイテム」により、顧客育成上のステージが遷移することがわかった。こうして、セグメントが見えたのである。
これらの結果をもとに、ブレインパッドのデータサイエンティストを交え、具体的な施策に落とし込んだ。機能性を重視するユーザーには同時購入の特別クーポンを、デザインを重視するユーザーには、新商品の特別クーポンをといった施策を行い、PDCAを回すことで、購入単価が115%に向上するという結果につながった。
以上の成功プロジェクトを振り返り、下田さんはこうまとめた。
「データ活用のプロジェクトの成否は、最初の段階で決まっていると思います。成功させるためには、関連部署をしっかり巻き込んでミッション化する。テクノロジーよりは人の話に戻ってきます。また、プロジェクトフローの箇所でも解説したように、『分析だけ』『施策だけ』と分けるとうまくいかない。そのつなぎの部分でうまくいかなくなることが多いので、両方に精通した人は、社内にはなかなかいないと思いますが、まずは『気概』が重要なのです。どちらにもかかわっていくという気概を持って、データ活用プロジェクトに取り組まれていく人がひとりでも増えればと思います」(了)