ポストCookie時代の鍵を握る1st party data活用
阪氏は、KARTEを活用することで「社内に点在し、眠っている顧客データをECサイトや店舗への再来訪を促すマーケティング施策に活かせる」と説明。さらに「自社で取得した顧客データの活用範囲を外部で配信する広告にも拡大できる」と続けた。
こうした施策展開の重要度が増す理由のひとつに、ウェブ広告におけるプライバシー保護の変遷がある。阪氏は、各国の法令による規制強化や大手プラットフォームの3rd party Cookie廃止に向けた取り組みなど、昨今の変化を紹介。顧客データ活用を考えるにあたり、解決すべき課題を改めて提起した。
「2018年にはGDPR(EU一般データ保護規則)、2020年にはCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、2021年には中国データ安全法、2022年には日本の改正個人情報保護法と、規制は年々強化されています。これらからも、企業による顧客の個人情報取り扱いに対する目が厳しくなっていることは明らかです。
こうした法規制の変化は、Apple、Googleなど大手プラットフォームにも大きな影響を与えています。3rd party Cookieについては、2020年にAppleのウェブブラウザ『Safari』が完全にブロックし、Googleは、2024年後半に段階的な廃止を開始すると表明しています」(阪氏)
さらに阪氏は、Cookie規制にともない、顧客データを取り扱う企業がウェブ広告施策を打つ中で生じている3つの課題について語った。
「ひとつめは、Appleが個人情報保護を目的にSafariに搭載したトラッキング防止機能『ITP(Intelligent Tracking Prevention)』によるものです。これによりコンバージョン計測データが欠損し、ABテストの結果や予算投資配分などを正しく判断できない状況に陥っています。
ふたつめは、こうした機能により配信精度が低下し、目的に即していない顧客に広告が配信されてしまうこと。そして3つめは、広告媒体が機械学習をする上でシグナルとなる元データの減少による、広告効果の悪化です。最適化アルゴリズムに必要なデータ量を担保できないことがその原因と言えます」(阪氏)
3rd party Cookieの廃止が進む、いわゆる「ポストCookie時代」においては、「1st party dataの活用を重視すべき」と、阪氏は続ける。1st party dataは「企業が顧客から同意を得た上で収集したデータ」を指すが、これらをうまく使えば、ECサイト内外で一貫した顧客体験を実現できる。阪氏は「収益増加、コスト効率向上を見込める」とした上でこう説明した。
「1st party data活用を加速させるには、乗り越えなければならない4つのハードルが存在します。ひとつめは、『ユーザープライバシーに配慮した運用体制の構築』です。法律への適正な対応、法務部門との調整、プライバシーポリシー・利用規約の整備などがこれにあたります。
ふたつめは『データ準備』で、デバイスを横断したデータ計測、オフラインデータとの統合、施策実行に活かせるデータ分析環境の構築は欠かせません。3つめは、『広告媒体とのデータ連携』です。Google、Yahoo! JAPAN、Facebook、Instagram、LINEなど各種プラットフォーマーとの連携や要件定義、API開発、運用保守、媒体の仕様に合わせたデータ加工のプロセスも必須となります。
そして4つめは、『一貫した顧客体験設計』です。ECサイトの内外や、広告とCRMデータの分断を解消すること、部門間の人的連携、組織共通の新たな指標設定などを指します」(阪氏)
プレイドが提供する新ソリューション「KARTE Signals」は、前出の4つのハードルのうち、「データ準備」「広告媒体とのデータ連携」「一貫した顧客体験設計」の3ステップを支援すべく開発されたものだ。阪氏は「自社のデータ基盤を広告運用に活用することで、Cookie規制の影響を受けない広告配信が可能になる」とした上で、実現できる施策についてこう続ける。
「ECサイトの行動データやCRM上の購買データ、店舗のPOSデータといった1st party dataは広告などの認知拡大にも利用可能です。KARTEに加えて、KARTE Signalsを利用することで、チャネルを問わず認知拡大から購買促進・継続利用まで一貫した体験を提供できるようになります」(阪氏)