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おさえておきたいEC・通販先進企業

生活者の声に寄り添う花王の「EC時代の生き残り戦略」とは


 日用品メーカーとして多くの著名ブランドを抱える花王株式会社は、商品の研究開発から販売までを一貫して行うことで、生活者の声に寄り添っています。今回は、同社の事業内容やビジネスモデル、自社ECにおけるEC戦略などを紹介します。

 花王株式会社は多様な日用品ブランドを展開する、日本の代表的なメーカー企業です。同社では優れた商品を開発するだけでなく、自社で商品を展開できる販売網も独自に構築し、近年は「花王ダイレクト通販サービス」をはじめとしたECにおける戦略の実践にも力を入れています。

 この記事では、そんな同社の事業内容や市場との向き合い方、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)時代に合わせた独自のEC展開のアプローチについて解説します。

花王株式会社の企業情報・事業内容

 まずは、花王株式会社の基本的な企業情報や事業内容を確認しましょう。

花王株式会社の企業情報

 花王株式会社の基本的な企業情報を、以下の表にまとめています。

社名 花王株式会社
本社所在地 東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号
設立年月 1940年5月
代表者名 代表取締役 社長執行役員 長谷部 佳宏
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 854億円
おもなグループ会社

花王グループカスタマーマーケティング株式会社

株式会社カネボウ化粧品

ニベア花王株式会社

花王クエーカー株式会社 など

花王株式会社の事業内容

 花王株式会社では、おもに以下5つの事業分野を扱っています。

  • ハイジーン&リビングケア事業
  • ヘルス&ビューティケア事業
  • ライフケア事業
  • 化粧品事業
  • ケミカル事業

 ハイジーン&リビングケア事業は、清潔さと家事負担の軽減を実現する商品やサービスを展開する事業です。洗濯用洗剤や柔軟剤、食器洗い洗剤、消臭剤など、日々の生活の衛生環境を向上させる幅広い商品ラインナップが揃います。

 代表的なブランドとして、「アタック」や「リセッシュ」、「キュキュット」などが挙げられます。

 ヘルス&ビューティケア事業は、感染症や紫外線といった外的な脅威から人々を守り、それらがもたらす衛生上の問題を予防するためのアイテムを扱う分野です。石けんやオーラルケア製品、ヘアスプレーなどが分類されます。

 代表的なブランドとして、「ビオレ」や「メリット」が挙げられます。

 ライフケア事業は、持ち前の研究力で生活者の本質的な問題に寄り添い、その課題を解決するためのソリューション開発に取り組む事業です。健康食品や消毒剤、その他業務用衛生ソリューションがそろいます。

 代表的なブランドには「ヘルシア」や「ハンドスキッシュEX」などがあります。

 化粧品事業は、ニーズに合わせた個性的なブランドを各種揃えることで、確かなサイエンスに基づいた「Kirei」を提供する事業です。

 おもなブランドとしては「KANEBO」や「KATE」、「Curél」などが挙げられます。

 ケミカル事業は、環境問題や社会問題の解決を目指す事業です。サステナブル素材の深化やエコソリューションの提案を通じて、脱炭素社会の実現や循環型経済へのシフトに貢献しています。

 界面活性剤などの油脂、プラスチック用添加剤などの機能材料、トナーやインクなどの情報材料と、3つの事業療育で様々な製品を生み出しています。

花王株式会社の沿革

 創業1887年と歴史ある企業の一つである花王株式会社の沿革を、以下の表でまとめました。

沿革
1887年 初代 長瀬富郎が花王の前身である洋小間物商「長瀬商店」を創業
1923年 吾嬬町工場(現 すみだ事業場)が操業を開始し、石けんの生産規模を拡大
1934年

家事全般について科学的にアプローチする研究施設として、家事科学研究所を設立

(1937年長瀬家事科学研究所に、1954年花王家事科学研究所に改称)

1964年

初の海外拠点となる、花王インダストリアル(タイランド)社設立

台湾花王社設立

1974年

アメリカのクエーカー オーツ社との合弁で、鋳物砂用フラン樹脂を製造・販売する花王クエーカー株式会社設立

(1997年100%子会社化)

1985年 事業分野の広がりに伴い、花王石鹸株式会社から花王株式会社に改称
1999年

広域8販社が合併し、花王販売株式会社設立

(2004年100%子会社化。2007年に花王化粧品販売株式会社と合併し、花王カスタマーマーケティング株式会社に)

2006年

株式会社カネボウ化粧品が花王グループに

中国に花王(中国)研究開発中心社設立

2013年 北欧でのビューティケア事業強化のために企業買収を行い、花王(スウェーデン)社に改称
2019年 ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表

 戦前は石けん事業を主軸としていた花王は、戦後に本格的な家庭向けブランドとしての地位を確立するとともに国際的な取引を増やし、磐石な研究開発と生産体制の整備を進めてきました。

 1990年代以降は多角的な事業展開を進め、2006年には株式会社カネボウ化粧品を傘下に収めるなどして、ライフスタイル全般を扱える地盤を固めてきた企業といえます。

花王株式会社の強みや特徴

 続いて、花王株式会社のビジネスモデルや事業の強み、そして近年注目を集めるEC戦略について確認しましょう。

ビジネスモデル

 花王株式会社が強みとしているのは、研究開発から商品の提供までを、グループで一貫して行うワンストップのビジネスモデルです。

 商品が消費者の手に届くまでの流れを全て自社で管理することにより、「より速く正確に商品価値を小売業に伝えること」「小売業との深い信頼関係に基づいた協業」「消費者の声やニーズの正確な把握と反映」を実現しています。

 また、近年は同社がこれまで踏み込んでいなかったメディカル領域への挑戦も見られています。「Another Kao(アナザー花王)」と名付けられたこの取り組みは、日用品以外の成長基盤を見いだすための野心的なプロジェクトで、従来のビジネスモデルとは異なるものです。

 同社が日用品で培った肌表面や体内部までの人体計測技術を活用し、独自領域を開拓することで、治療や診断における存在感を発揮することを目指しています。

事業の強み

 これまで花王株式会社の成長を支えてきたのは、以下3つの強みです。

  • 高い研究開発力
  • コンシューマープロダクツ事業とケミカル事業のシナジー
  • 高い倫理観

 花王では、売上高の約4%を研究開発に投資し、その約半分を、ヒトの本質と物質の本質の研究である「基盤技術研究」に投じています。これはグローバルに見ても業界内では高い数字といえます。

 基盤技術研究と商品開発研究を交差させる「マトリックス運営」も花王の特徴の一つです。これにより、一つの技術をカテゴリーの異なる様々な商品に応用でき、数々のヒットブランドの創出につながっているのです。

 また、商品開発とケミカル事業が互いに連携し、付加価値の高い研究成果を商品開発へ活かせる強力な体制を構築してきたことで、開発にかかるコストの削減と競合との差別化を達成することができました。

 同社では、高い倫理観を持って事業に取り組んでいることも、安定した成長を続けられた要因として考えられています。企業理念「花王ウェイ」を掲げ、法と倫理に基づく事業成長を創業以来継続してきたことで、日本や世界で信頼される商品の提供を実現してきました。

 さらに、2021年度には中期経営計画の「K25」をスタートして事業再編を行っています。ここでコンセプトとしているのが「未来の命を守る」という目標を軸にしたライフケア戦略です。データを活かした、ユーザー個人の健康と美容に寄り添うパーソナライズ戦略を実行することで、一人ひとりの豊かな健康と生活を実現できる取り組みを始めようとしています。

花王のEC戦略

 生活者との接点確保を重視する花王株式会社は、2021年にEC部門を本社に統合し、本格的なデジタル販路の拡大に努めるなど、EC需要の高まりに合わせたEC戦略を進めています。

 具体的には、自社EC「花王ダイレクト通販サービス」とその他ECモールの使い分けを効果的に行い、ECモールユーザーに適した商品展開を進めることで、オンライン上での存在感を高めています。

 また、商品をあらゆるチャネルで同時展開するのではなく、ECモールで一部商品の先行販売を行うなど、ブランドに合わせた展開も進行中です。

 さらに、ECを通じて得られるデータを活用し、商品の需要予測や顧客体験の新たな創出も実現しています。

花王株式会社の近年の大きな取り組み

 花王株式会社が実施した近年の大きな取り組みとしては、おもに以下が挙げられます。

マスマーケティング脱却に向けたDX戦略を推進

 TVの衰退とECの台頭に伴い、花王株式会社ではマスマーケティング脱却に向けたDX戦略の推進が顕著です。

 同社では新たにDX戦略推進室を設置し、自社EC立ち上げやモール出店といった直販チャネルの開拓と強化、そしてUX(顧客体験)向上に向けたデジタルツールやアプリ開発の導入推進を行っています。

 カスタマーサクセスの実現を通じてブランドへの共感を創出し、従来のマスメディアではできない価値の提供へと舵を切りました。

個人バイヤーと提携し中国EC市場への参入を強化

 花王株式会社は国外向けの商品展開も、ECを軸として積極的に進めているところです。なかでも中国市場は同社の重要なマーケットですが、最近では現地のバイヤーやインフルエンサーと協業するなど、EC市場開拓に乗り出しています。

 同社のような日系企業が中国市場で商品を展開するための課題となるのが、市場への参入と知名度の獲得です。直接企業が市場へ乗り込むのではなく、現地バイヤーやインフルエンサーを通じて、各種手続きや知名度の壁を乗り越えるアプローチを行っています。

 知名度の高いブロガーやインフルエンサーの影響力は非常に大きく、彼らと契約を結ぶことでスムーズな商品展開を実現し、失われた訪日需要をカバーするほどの成果を得ているそうです。

欧州で「SENSAI」の直営ECをオープン

 花王株式会社はアジアだけでなく、ヨーロッパにおいても影響力を拡大しています。同社が手掛けるスーパープレステージブランド「SENSAI」の直営ECを、2021年4月にヨーロッパに向けてオープンしました。

 日本的な細やかさを想起させる、茶道の精神や一期一会のおもてなしになぞって、スキンケアステップやメソッドを「Saho(作法)」と呼ぶなど、丁寧な日々のケアを提唱し、ライフスタイルに日本的な価値観を取り込むことを提案しています。

 また、直営ECの強みを活かし、顧客のニーズに合わせパーソナライズされた提案やレビュー機能など、モールECなどではできないアプローチも今後予定しているということです。

目を通しておきたい花王株式会社のトピックス

 その他、目を通しておきたい花王株式会社のトピックスを確認しましょう。

2022年12月26日:花王、育児両立支援制度の新設・拡充で女性活躍推進を加速 女性の育児期ブランク最小化をめざす

花王は、2023年1月より、グループ全体のDE&Iの取り組みを深化させていく一環として、取得を必須とした有給育児休暇制度を新設するとともに、育児期における短時間勤務制度の拡充を図る。

2022年12月15日:花王、生活者と直接つながる双方向デジタルプラットフォーム『My Kao』スタート 製造業から「UX創造企業」への変革目指す

花王は、2022年12月15日より、生活者と直接つながる双方向のデジタルプラットフォーム『My Kao』を立ち上げ、運用を開始した。

2022年12月6日:花王、BtoB衛生ソリューションビジネスに参入 企業や団体の感染症対策をサポートする新会社設立

花王は、2023年1月より、花王プロフェッショナル・サービスを通じ、企業や団体の感染症対策をサポートするBtoB衛生ソリューションの事業化を開始し、それにともない、新会社「キラリアハイジーン」を設立する。

2022年12月2日:花王、「フェムケア エピソードバンク」の運用を開始 ~女性の健康に関するエピソードを投稿・閲覧できるソーシャル・メディアを開発~

花王は、12月2日より、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 ソーシャル・コンピューティング研究室が開発した「エピソードバンク」を応用し、女性の健康に関するエピソードを自由に投稿・閲覧できる独自のソーシャル・メディアとして「フェムケア エピソードバンク」の運用を開始した。

2022年11月24日:ライフケア事業領域で第一三共ヘルスケアとの共同開発を開始 ~基盤技術や製剤化技術を相互に有効活用~

花王は、ライフケア事業(皮膚関連)領域において、第一三共ヘルスケアと共同開発に関する契約を2022年11月24日に締結した。

2022年11月7日:花王とキリンが、内臓脂肪と免疫の関連について共同研究を開始

花王とキリンホールディングスは、和歌山県立医科大学が主宰し、ヘルスプロモーション研究センターが取りまとめているコホート研究「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に2022年11月から参画し、内臓脂肪と免疫の司令塔(プラズマサイトイド樹状細胞/pDC)などの活性について、その関連を調査する研究を共同で実施する。

2022年10月7日:花王、美容部員を“ブランド エバンジェリスト(ブランドの伝道師)”へ育成

花王は、化粧品事業において、カウンセリングブランドの最大資産である美容部員の役割を最適化することにともない、2023年1月より、総称を“ブランド エバンジェリスト”に変更する。

2022年8月15日:花王、スペインで香料生産設備を増強 能力倍増へ

花王は、欧州で香料事業を強化するため、スペインのオレッサ工場の生産設備を増強すると発表。2022年12月に設備を完成させ、23年初めの稼働を目指す。

2022年8月8日:高知市、感染対策や健康づくりで花王と連携協定

高知市は8日、新型コロナウイルスの感染予防対策や市民の健康づくり、地域活性化などを目的に花王の販売会社、花王グループカスタマーマーケティングと包括連携協定を結んだ。

2022年6月27日:花王やソニー、ESGへの取り組みを社員のボーナスに反映

花王は、ESG(環境・社会・企業統治)への取り組みを一般社員のボーナスを含めた賃金に反映する制度を導入した。

まとめ

 花王株式会社は、研究から商品開発、そして商品提供までを自社で一貫して行うことによって顧客満足度と商品開発力を向上させる仕組みを構築し、確固たる地位を手にしてきました。

 同社はマスマーケティングに軸を置いた従来のアプローチから脱却し、近年のEC需要の高まりにも柔軟に対応しているほか、多角的なチャネルの獲得やデータ活用による新たな顧客体験創出にもチャレンジしています。

 世界各国での商品展開や、メディカル部門への参入など、挑戦的なプロジェクトにも果敢に取り組む姿勢も目立ち、成長意欲が強い企業であることがわかります。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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