サステナブルやエシカルとはそもそも何か?違いはあるの?
エシカルもサステナブルもファッション業界で声が上がるワードになりましたが、「カタカナだらけでよくわからない」という人もいるでしょう。まずは、「サステナブル」や「エシカル」という言葉を別々に考えるとわかりやすいかもしれません。
サステナブルは地球の未来を考えること
「持続可能な」と訳される「サステナブル」とは、地球の未来を考えた世の中の構造づくり、あるいは地球未来を考えたひとりひとりの行動のことです。ファッション業界の場合、衣服の素材や廃棄方法などを地球環境目線で考えることが該当します。
エシカルは社会を考えること
一方の「エシカル」とは英語で「倫理的な」と訳され、消費の立場から社会を考えることです。
- 人権問題
- 社会問題
- 環境問題
- 動物愛護
より良いファッション産業を構築するための共同運動「Ethical Fashion Forum」が2006年に設立したことが、日本へのエシカル意識を促す動きのきっかけとなったと言っても良いでしょう。
ファッション業界で巻き起こるエシカル・サステナブル問題
日本のファッション業界でエシカル・サステナブル問題が起こっているということは、まだ浸透していないと言えます。しかし、世界的に見ると昨今のファッション業界では、洋服の製造から消費までの間に発生するごみ問題や環境問題・労働者の人権問題などを問題視する声が上がっているのです。
服の大量生産・大量廃棄
着用しなくなった服を何気なくゴミとして処分している人もいるでしょう。その裏では、誰の手にもわたることのない売れ残った洋服が、日本だけでも年間おおよそ10億枚廃棄されています。
また、大量破棄問題は高級ブランドにまで及び、アパレル業界全体の問題となっています。
過去に、高級ブランド「バーバリー」が衣類やアクセサリーなどアパレル関連商品の売れ残りおおよそ約41億8000万円分を破棄処分し、環境保護活動団体から非難を受けたという報道があったほどです。
ファストファッションの闇
ファッション業界では、シーズンを先取りしながら短いスパンで洋服を販売する「ファストファッション」の構造が世界的にできています。
なぜ「ファストファッション」が低価格かというと、人件費の安いとされる海外(中国・バングラデシュ・ベトナムなど)に縫製を依存しているという実態があるためです。
欲しいものを安く買いたいという消費者の要望から誕生・定着した「ファストファッション」は、結果的にどこかで辛い思いをしている人たちを生み出す構造になりました。
誰かを劣悪な環境下で酷使する労働環境
安い服の裏では、劣悪な環境の元、酷使されて働かざるを得ない人たちがいるということを忘れてはいけません。2013年にバングラディシュの首都ダッカにある大規模縫製工場「ラナ・プラザ」の崩落事件はファッション業界の「エシカル」における人権・社会問題を露見させました。
ビルの耐久性の問題だけではありません。縫製工場で働く人たちは朝から晩まで働いたにもかかわらず月収3,900円程度という賃金問題があっただけでなく、現場監督からのパワハラ・セクハラは当たり前という劣悪な労働環境にあったそうです。
バングラディシュは世界各国のアパレルブランドが縫製工場を設立していることで知られていますが、ラナ・プラザ事件をきっかけにアパレル業界が「エシカルファッション」への方向へ舵をとることとなったとも言えます。
日本の町工場の崩壊
かつて中流のファッショブランドの縫製を担っていた日本の町工場が消滅しつつあることも問題視されています。ファストファッションが登場する前、低価格ブランドと高級ブランドの間には中流ブランドが数多くありました。
しかし、現在では日本のアパレル産業における低コスト化の構造から、人件費の安い海外へ縫製工場が移転し、かつて中流のファッショブランドの縫製を担っていた町工場が消滅しつつあります。
ファッション業界にやってきたサステナブル・エシカルブランドの特徴
ファッション業界の問題・課題を解決しようとファッション業界に新しく登場したのが、「サステナブルファッション」や「エシカルファッション」を掲げた「サステナブルでエシカルなブランド」です。
これまでのファッションブランドと異なり、サステナブル・エシカルブランドは以下のような違いが見られます。
特徴 | 内容 |
---|---|
原価・製造過程を公開している | 大量生産・大量破棄の原因となる原価が適切かどうか、縫製工場の労働者の労働環境が適切かどうかをホームページで公開する動き (例:10YC・EVERLANE) |
少量生産の実行 | 必要な人に必要な分だけ届ける生産方法。 (例:少量生産・受注生産・クラウドファンディングなど) |
フェアトレード | 人件費の安い国への依存でなく、発展途上国や障がい者が活躍できる製造の機会を与える。 |
オーガニック素材の採用 |
|
アップサイクル | 使わなくなった洋服などの素材から新たな洋服などの製品を生み出す動き。 |
リクレイム | 洋服の製造過程で出た廃材を再生利用する。 また、古着や売れ残った在庫商品を回収し、素材を再利用することも含まれる |
環境に配慮したサステナブル素材の採用 | 環境に配慮した植物系繊維やプラスチックを利用した洋服の製造 |
クラフトマンシップ | 縫製・染色などアパレルに関する町工場の職人たちが持つ技術を取り入れた洋服づくりや、ヴィンテージ品を活用する試み。 |
動物素材の不使用 | ウールやアンゴラ・レザーなど動物由来の素材を使わないファッション。 また、動物実験をしない試み。 |
無駄を省いた製造 | 労働過程だけでなく、製造過程や輸送・販売までの段階で生じる無駄を削減。 (例:axes femme) |
社会のことを考えた商品・サービス | NPOやNGOへの寄付や地域貢献や復興・障がい者支援などに貢献する取り組み。 |
サステナブル・エシカルファッションの意外な問題点
サステナブルでエシカルなファッションが日本のアパレル業界でも取り正される一方で、サステナブル・エシカルファッションならではの問題点が浮き彫りになりつつあります。
言葉だけのひとり歩き
「エシカル」や「サステナブル」といったカッコいいカタカナ言葉だけが独り歩きしてしまい、アパレルブランドのマーケティングに活用されてしまうという現象です。
アパレルブランド側が売るためだけに「エシカル」や「サステナブル」といった言葉を使うだけでは、消費者がサステナブルやエシカルの本来の意味を知らずに「なんとなく」手に取る行動だけを促してしまうことが予想されます。
安易に購入した洋服は「エシカル」「サステナブル」を謳っていたとしても、これまでと同じように取り扱われてしまう可能性があるのです。
ブランドの認知度が低く価格が高い
エシカルやサステナブルを謳うアパレルブランドは、広告宣伝費へかける予算も少なく、消費者へ認知されにくいという課題を抱えています。
エシカルファッションやサステナブルファッションは、高級とファストファッションの間にあるブランドが多く、洋服の価格が比較的高価です。
それにも関わらず広告宣伝費をかけられない理由は、受注生産・少量生産などで生産数が限られていることや原価を適正に保っているからという点にあるでしょう。
エシカルやサステナブルブランドでは求めている人にだけ届けられる生産量で服を生産していることから、いくら高価な洋服だとしても利益率が低くなり、広告宣伝費に費用を避けないという事情があるようです。
日常ファッションでできるエシカルでサステナブルな暮らし
エシカルやサステナブルは遠いことのように思えるかもしれませんが、日常のファッションにおいても、洋服を買う前・買った後など日常からエシカルでサステナブルなファッションを心がけることはできます。
サステナブル・エシカルファッションブランドで服を購入する
サステナブル・エシカルを掲げるファッションブランドで洋服を購入することは、サステナブルでエシカルな暮らしを実現するための最短ルートです。
例えば、お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦さんがプロデュースしたエシカルでサステナブルなファッションブランド「CARL VON LINNÉ」はYouTubeを中心にSNSなどで話題となりました。
「CARL VON LINNÉ」の場合、影響力のある有名人がきちんとサステナブル・エシカルアパレルについて勉強したうえでブランドを立ち上げたことから、消費者も意味を理解したうえで購入でき、話題の要因に至ったのではないでしょうか。
また、サステナブル・エシカルファッションに興味がある場合は、SNSを中心にアンテナを張ることで情報を得やすくなるのでおすすめです。
購入前に服の素材が何かを意識する
エシカルやサステナブルファッションを心がけたくても、価格の問題から手を出したくても出しづらいという人もいるかもしれません。通常のファッションブランドで洋服を買う際も、環境にやさしい製品やオーガニック・プラスチック素材が環境に配慮しているかなど素材を意識するだけでも環境に配慮した日常に寄与できます。
今ある服を大事にする
短い期間の服の廃棄を回避するためにも、今ある服を大事に着用することも大切です。ファッションブランドも、消費者の行動や声をチェックしたうえで服を製造しています。消費者が必要なものを必要な時だけ買うことにより、ファッションブランドも新しい方向に歩き出すきっかけになるかもしれません。
服を頻繁に洗濯しない
洗濯時に洗剤からでる「マイクロビーズ」や洋服から出る「マイクロプラスチック」といった目に見えない有害物質は、海に流れ出てしまうことで環境破壊につながることが問題視されています。
必要以上に洋服を洗濯しなければマイクロプラスチックの流出を少なくできますし、マイクロプラスチックを捕らえる洗濯ネットなども販売されているため、生活に取り入れると良いでしょう。
また、洗剤の選び方も意識することで環境に配慮したエシカルでサステナブルな日常を送れます。
中古売買サイトを利用して服を買う
メルカリ・ヤフオクなど、中古の洋服を個人間で購入したり販売したりするサイトの利用もおすすめです。服を捨てずに必要な人に自分の洋服を届けられることから、大量廃棄問題の解消につながる行動ができます。
まとめ
「エシカル」と「サステナブル」の言葉の意味は違うものの、ファッションという共通項目でつながっています。
普段何気なく身にまとう洋服は、サステナブル・エシカルファッションの観点から見ると、残念ながら環境や人権問題など様々な問題を抱えているのが現状です。
ひとりひとりの消費行動を見直すことで社会問題を考えられるだけでなく、ゆくゆくは地球の未来を考えた行動につながるでしょう。
サステナブル・エシカルファッションとは何かを本質から理解し、洋服を通じて自分ができる範囲で地球や社会を意識した消費行動をすることをおすすめします。