CX向上につながるクチコミ活用 エンゲージメントを高めて価値創出へ
Cookie規制という外的要因により、広告媒体としてのリテールメディアへの注目度は、以前よりも高くなっている。ただし、急に価値が高まったわけではなく、「以前よりメディアとしてのポテンシャルを有していた」と山崎氏は語る。
「リテールメディアは、家電量販店と類似しています。家電量販店はさまざまなブランド・メーカーの商品を扱い、売場では各メーカーのスタッフが自社商品の説明や接客を担当しているケースも多く存在します。ブランド・メーカーにとっては、潜在顧客にリーチしてエンゲージメントを高め、購入まで後押しできる貴重な場となっています。
複数ブランド・メーカーの商品を扱うリテールメディアも同様で、ブランド・メーカーは同メディア内で自社商品のエンゲージメントを高め、価値を創出したいと考えています。ここでリテール企業側が行うべきは、家電量販店のスタッフにあたる広告出稿媒体としての費用対効果があると認めてもらうこと、つまりリテールメディアの場そのものに可能性を見出してもらうための価値創出です」(山崎氏)
リテールメディアとしての価値を高めるには、CX向上が重要となる。この課題に大きく寄与するのが、「クチコミ(レビュー)の活用」だと山崎氏は続ける。
「ZETAでは、5年ほど前からレビュー・クチコミ・Q&Aエンジン『ZETA VOICE』の提供を開始していますが、直近2年は急激に導入のご相談が増えています。日本でもクチコミの有用性が広く認識されてきたと言え、クチコミの機能や活用法も進化しています」(山崎氏)
クチコミの代表的な要素に、商品に対する「評価」がある。山崎氏によれば、日本のECサイトにクチコミが導入され始めた当初は評価項目が総合評価のみというケースも多かったが、最近は評価項目が複数設定され、「性能」「デザイン」「価格」など評価を行う観点を明示したECサイトが増えていると言う。検討中の顧客にとっては情報の精度が高いほうが参考となるため、当然CXも向上する。
「ZETA VOICEでは評価項目を複数設定できるだけでなく、レビュアーのプロフィールも登録可能です。こうすることで、『どのような顧客がそのクチコミを投稿したのか』まで検討中の顧客に示すことができ、より高いコンバージョンにつながります」(山崎氏)
たとえばアパレルであれば、「性別」「年齢」「体型」などの条件が類似した顧客のクチコミを参考にしたいと考えるケースが多い。また同一商品でも、顧客のスキルや経験値によって評価が大きく変わるスポーツ用品や工具などの場合は、レビュアー情報も含めて提供されていることで、より有益な情報となる。
「商品の特性に応じた複数の評価項目に加え、レビュアーの情報といった詳細なクチコミを収集・提供できれば、多くの顧客にとって有用なECサイトとなります。そして、検討段階の顧客がクチコミで不明点や懸念事項を払拭し、納得した上で商品を購入できれば、結果として返品率の改善およびコンバージョン向上といった効果も期待できます。これが、CX向上につながるクチコミ活用です」(山崎氏)