消費動向とEC利用はコロナ禍で大きく変化 国内におけるEC体制づくりと越境EC対応がカギに
國村氏のセッションは、CNBCのニュースで報じられたセールスフォース・ドットコムのCOOであるブレット・テイラー氏のコメント紹介から始まった。同氏は「ニューノーマルがどう変わっていくのか」という問いに対して、「変化そのものがニューノーマル」と回答している。つまり、なにかが変わってニューノーマルになるのではなく、変わり続けることがこれからの当たり前になるということ。企業はその変化に対応していく必要があり、そのために重要なのは「アジリティー=俊敏・柔軟な対応」というわけだ。
それでは、そんな「変化が当たり前の時代」に向けて、EC市場はどうなっているのか。また、何をどう備えればいいのかーー。
そこで、まず國村氏は、経済産業省による「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」からピックアップした『日本国内の消費者動向』を紹介した。それによると、コロナ禍の影響を受けた2020年度の「1世帯あたりの商品およびサービス支出の年間支出金額」は、モノ支出がさほど減らなかった一方で、旅行やライブなどのコト支出が激減している。
さらにBtoC限定でEC市場規模をみてみると、2020年度は19.2兆円で前年度比マイナス0.4%となっている。こちらも「モノは売れたが、コトが少なくなった」ことが明らかだ。その内訳は、食品や生活用品などの物販分野で利用が12.2兆円、昨対で21.71%も増えており、これまでEC化率が低かった生活必需品が、コロナ禍によるステイホームの影響でEC化率が向上し、購入額も増えたことが伺える。旅行や飲食、チケットなどのサービス系分野が激減、電子書籍やオンラインゲームなどのデジタル系分野では若干増加している。
いわばコロナ禍でモノ消費の支出が増えており、幅広い商材でEC化率も上昇している。特に書籍・映像・音楽ソフトなどのメディア商材は42.97%と高く、家電商材も37.5%と高い。全体のEC化率も、自社EC・マーケットプレイスを含めると、1年間で6.76%から8.08%へと上昇傾向にある。
こうした結果をふまえ、國村氏は“押さえておきたいインサイト”として、①コロナ禍によって非接触での買い物がふえていることに加え、事業者側で意識べきこととして②物流キャパシティの見直し、③ECデジタルマーケティング部門への人材配置をあげた。
これまでの国内消費において、重要なプラス成長要因となっていたのが「インバウンド消費」だ。しかし、コロナ禍により、海外、主に中国からの観光客による“爆買”が消え、国内小売業にとっては大打撃となった。消滅した需要は4.8兆円にも上るという。そうした状況を受け、経産省のレポートでは、海外でも有名なブランドにおける「越境ECの可能性」を示唆。國村氏は、そのために必要な対応として、「多言語対応や海外発送」、「高品質なメイドインジャパン品質」、「海外トレンドの察知」をあげた。