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季刊ECzine vol.03 特集「新しいコマースサービスが変えようとしていること」

倉庫との連携で夢のクローゼットを実現 パーソナルスタイリングでファッションを通した感動体験を


 もうひとつのクローゼットがネット上に。女性には夢のようなファッションレンタルサービス『airCloset(エアークローゼット)』を現実化できた背景には、パートナーとして物流に取り組む寺田倉庫の存在があった(※本記事は、2017年12月25日刊行の『季刊ECzine 2017年冬号』に掲載したものです)。

 スタイリストが選定した洋服が毎月自宅に届き、返却期限なしでレンタル可能。気に入った洋服は買い取ることもできる月額制のファッションレンタルサービスが『airCloset』だ。2014年10月にティザーサイトをオープン。12月に1ヵ月で2.5万人が会員登録。その反響から、NHKはじめ取材が殺到し、代表である天沼聰さんは一躍メディアの寵児となった。

 サービスの斬新さはもちろん、スタートアップ企業として注目されたことも大きい。サービス開始時から歴史ある倉庫会社である寺田倉庫と業務連携、2015年4月に出資を受け、社外取締役に同社の月森正憲上席執行役員を迎えている。

 ECにかかわる人であれば、クリーニングや個品管理などを含む裏側の仕組みをどのように実現させたのか気になるところだろう。『airCloset』を実現させたふたり、天沼さんと月森さんに話を聞いた。

スタートアップと歴史ある倉庫会社が出会う

株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO天沼聰さん(写真・左)寺田倉庫 上席執行役員/MINIKURA担当月森正憲さん(写真・右)
株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO天沼聰さん(写真・左)
寺田倉庫 上席執行役員/MINIKURA担当月森正憲さん(写真・右)

 オンライン上のもうひとつのクローゼットというこれまでになかった概念のサービスにもかかわらず、開始2年9カ月で14万人の会員から支持を得る『airCloset(エアークローゼット)』。同サービスを運営するエアークローゼットでは、エイブル社と共同で実店舗のファッションレンタルショップ『airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)』を2016年10月から表参道で展開。2017年10月からはファッションスタイリングサービス『pickss (ピックス)』を開始している。

 「働く女性やママさんなど、忙しい女性の方が、新しいファッションとの出会いを求めていることが表層化してきていると思います。また、ファッションに対してアイテムを買う・買わないという判断だけでなく、どう楽しむかの選択肢が加わり、自己表現の手段にもなってきている。必ずしも自分で選び、所有する楽しみかただけでなく、身につけたその瞬間に、自己表現のツールとしてどうかという体験が可能になってきている。ファッション業界全体の動向として、モノからコトへの流れを感じています」(天沼さん)

 ECに携わっていると、つい、「どう売るか」の視点から発想するもの。新たなファッション体験を提供する、『airCloset』のような発想はなかなか出てこないものだ。

 「消費者目線に立ち、徹底的にユーザーエクスペリエンスを考えようと社内でも言っています。ファッションを通した、感動体験を作りたいと思ってサービスを設計しているんです。どうやったらそれができるか。お客様に聞いてもわかりません。サプライズパーティーを計画するのに、本人に『何をしたら驚きますか?』と尋ねるようなものです。ユーザーのことを、徹底的に考え抜くほかありません。できる限り俯瞰して、かつ、業界の利ではなくお客様の利になるもの、価値あるものを考え抜いて、これからも新機能、新サービスをリリースしていきたいと考えています」(天沼さん)

 ITを用いたファッション関連サービスを考案するベンチャー企業は少なくないが、ツールベンダー側に回ることが多く、一般消費者に対して『airCloset』ほどの存在感を示せているところは少ない。その理由として、サービスコンセプトはもちろんだが、実際にモノを届ける仕組みを構築できるかが大きい。『airCloset』の物流を担うのは、寺田倉庫だ。創業1950年の倉庫会社だが、2012年9月からは箱単位で倉庫を持てるクラウドストレージ「minikura」を提供するなど、こちらも既存ビジネスの範囲にとどまらない展開を見せている。『airCloset』の可能性を早くから見抜き、サービス開始当初から出資。これまでにエアークローゼットを含む、スタートアップ企業6社を支援している。天沼さんと寺田倉庫の上席執行役員である月森さんの出会いは、サービス開始の半年ほど前、2014年の夏だという。

 「ファッションのオンラインレンタルサービスをやりたいメンバーがいるということで、会うことになりました。パソコン上で操作して、このアイテムとこのアイテムを、この日からこの日まで借りますというサービスかなと想像していたのですが、実際に天沼さんに会ってみたら、『ユーザーがまだ出会えていないファッションアイテムとの出会いを作る』という発想を聞き、驚きました。物流面でも、通常のECのモノの出し入れではなく、レンタルされたアイテムが返却されて、クリーニングして、また出してという流れがある。天沼さんとふたりで、フローを描くところから始めました。そして、役員会で『airCloset』の話をしたところ、社長が会ってみたいと。若い人を支援するのが大好きなんですよ。実際に会わせたら、事業内容うんぬんより、天沼さんたちのキラキラした目を見て、もう支援することを決めてしまいました」(月森さん)

 「事業のことよりも、どういうことを考えているんだと、構想について聞かれた覚えがあります。寺田倉庫さんのオフィスは、サムライインキュベートさんと同じビルにあるんですよね。お伺いしたら、スタートアップ企業のようにカジュアルで、皆さん立ち上がって挨拶してくださって。倉庫会社さんのオフィスとしてイメージしていたものとは異なり、良い意味で驚きました」(天沼さん)

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