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ECzine Day 2024 June

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ECで触覚は演出できる? 中央大学朴教授・b8ta・ブレインスリープと考えるリアルな体験創出の重要性


 皆さんは「ハプティック知覚」という言葉をご存じだろうか。学術的には、人は手指の皮膚にものが触れることでその存在を認知し、自ら手指を動かすことで特徴を把握すると言われている。こうした触認識の様態を示す同知覚が消費者行動に与える影響について研究しているのが、中央大学 商学部 教授の朴宰佑さんだ。今回は、朴さんと体験型店舗「b8ta」を運営するベータ・ジャパン合同会社 COOの羽田大樹さん、株式会社ブレインスリープ 代表取締役の道端孝助さんの3者に話を聞き、学術的・実務的視点の双方から体験の重要性を紹介する。

デジタル・パラドックスを解消し、楽しい購買体験創出へ

 「消費者の購買意欲を高め、体験を充実したものとするには、視覚に次いで触覚が重要となる」――こうした考えを学術的視点から読み解き、小売が体験を創出する重要性を論文『小売マーケティングにおける触覚要因の効果 ―身体化認知理論からの示唆― (公益財団法人流通研究所『流通情報』)』にて、2019年に発表した朴さん。消費者は普段の生活において、「無意識に商品に触れることで特徴の把握や良し悪しの判断をしている」と説く。

「商品の情報の大部分は視覚から得ることができますが、それだけでは消費者にとって満足のいく購買体験を作り上げるのは難しい。こうしたことが、さまざまな研究から明らかになっています。消費者は商品に触れることで自信と確信を得て、こうした気持ちが満足度にも直結するのです。商品に直接触れることができないECでは、こうした体験創出が物理上難しいことで、カゴ落ちや返品につながることもわかっています」(朴さん)

中央大学 商学部 教授 朴宰佑さん

 朴さんは、「消費者の接触欲求には『手段的接触欲求』と『自己目的的接触欲求』のふたつがある」と続ける。前者は商品に触れることで質感や重量など客観的な特性を把握したいという欲求、後者は購入意欲の有無にかかわらず商品そのものの感触を楽しみたいという欲求を指す。

「こうした2種類の接触欲求が存在することを意識した上で設計を行うと、楽しい購買体験を作り上げることができます。この数年でオンライン購入者が飛躍的に上昇し、利便性・効率性の高い購買体験が研ぎ澄まされた一方で、体験創出に重要な触覚を使った購買体験はどんどん失われてしまっています。こうした『デジタル・パラドックス』とも言える現状を解消しようと、アメリカではショールーミングや体験型の店舗が増え、その流れは日本にも広がり始めています」

 体験型店舗「b8ta」を2020年8月に東京・有楽町と新宿の2ヵ所にオープンし、2021年11月には渋谷への進出も決めているベータ・ジャパン COOの羽田さんも、「店舗に訪れるお客様が、手段的接触欲求と自己目的的接触欲求の双方を求めている様子は見受けられる」と語る。

「b8taの店舗では、『b8taテスター』と呼ばれる接客スタッフが来店の動機や、ブランド・商品を知ったきっかけをお客様にヒアリングしています。お声に耳を傾けてみると、ある程度リサーチをした上で気になるものを確かめるため、つまり自身の判断に確信を持つために来る人もいれば、『新しいものに触れたい』といったように、好奇心をくすぐられに来ている人もいることがわかりました。オフラインでのコミュニケーションを楽しみたい人はやはり一定層いるのだろうと考えていましたが、学術的観点から改めて説明を受けると、b8taでのお客様の行動も腑に落ちます」(羽田さん)

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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