IT人材に限らず、現場のEC担当者が運用可能なシステム構築を
OMOの実現には、前出した商品情報と顧客情報のデジタル基盤構築が必要となるが、これらを整えた上で実際のチャネル拡張・顧客エンゲージメント構築を実行するのは「現場のEC担当者であることが望ましい」と臼谷氏は語る。その理由として、顧客行動の変化に対応するには俊敏性が求められることを挙げた。
同氏は、「オンラインにおける顧客行動は大きく変化し、各チャネルに押し寄せるトランザクション量が増えている」と説明した上で、受け止める企業側がIT人材の確保に苦戦していることに言及。IT人材の育成には数年を要することや、新たに雇用するにもIT人材自体が少ないことなどから、「IT人材の確保と対応すべき顧客行動に大きなタイムラグが生じており、チャネル拡大・顧客エンゲージメントの領域については、既存のEC担当者が運用できる仕組みでなくてはならない」と強く訴える。
もちろん、IT企業をパートナーとして委ねる部分があっても問題はない。しかし、変化にスピーディーに対応するには、EC担当者の活動可能範囲を広げることも大切だ。そのために、「既存の人材が容易に運用できる仕組み作りは欠かせない」と臼谷氏は言う。
ここで臼谷氏は、顧客行動の変化に迅速に対応した事例として、THE BODY SHOPのコロナ禍における取り組みを3つ紹介した。ひとつめは数週間で新しい配送センターを立ち上げたこと。ふたつめは、カスタマーサポートの人員を30人から300人に増やしてライブチャットや電話などでの相談に対応し、併せて電話で注文した商品を店舗で受け取るサービスを開始したこと。そして3つめは、3ヵ月で世界中に18のサイトを開設し、DXを加速させたことだ。
同社の取り組みについて臼谷氏はこのように語り、セッションを締めくくった。
「THE BODY SHOPは何もないところから、これらの施策を速やかに実現できたわけではありません。すでに商品情報や顧客情報の基盤を整備していたからこそ、複数チャネルの展開や、顧客エンゲージメントを高めるコミュニケーション施策を短期間で実施できたのです。SAPジャパンは、SAP Customer Experience ソリューションを通じ、デジタル基盤の構築・整備以外にも、さまざまな方法で前進する企業に伴走していきます」(臼谷氏)
▼SAPジャパンは、企業のCX向上を支援するイベント「SAP CX DAY 2021」を2021年11月18日(木)13:00よりオンラインにて開催します。
アシックス、エイチ・ツー・オー リテイリング、Mizkanなど、カスタマーサクセス、従業員満足、企業としてのパーパスを追求しつつ新たに事業成長の基盤を築いている先進企業より、その取り組みをご紹介いただきます。
開催概要
- イベント名:SAP CX DAY 2021
- 開催日時:2021年11月18日(木)13:00 ~ | オンライン開催