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2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

季刊ECzine vol.08特集「To be first call ~最初に声がかかるお店のつくりかた~」

ブランドごとに異なる戦略を 資生堂が顧客との関係構築にデータを活用するワケ


 およそ150年にわたり顧客と関係を築いてきた資生堂だからこそ、どんなチャネルでも店舗と同じブランド体験が求められる。それを支えるデータ戦略とは。※本記事は、2019年3月25日刊行の『季刊ECzine vol.08』に掲載したものです。

 資生堂では、2012年にウェブ上の会員サイト「ワタシプラス」をローンチし、EC事業へと本格進出。ほかの化粧品メーカーと比べるとやや後発だったものの、徐々にシェアを拡大し、今では化粧品におけるECのトップシェアとなっている。1872年創業の老舗がEC事業へ乗り出し、見事成功を収めた理由とは。資生堂ジャパンの徳丸健太郎さんに話を聞くと、その背景には、ユーザーと長期のリレーションを構築するための秘訣が見えてきた。

資生堂ジャパン株式会社 EC事業部長 徳丸健太郎さん
資生堂ジャパン株式会社 EC事業部長 徳丸健太郎さん

コミュニケーションの比重がマスからウェブに 
ワタシプラス立ち上げを語る

 全世界約120の国と地域で事業を展開している資生堂。現在、グローバルで1兆円を売り上げる中、ECの売上構成比はおよそ8%(2017年)。化粧品の領域で、ECシェアナンバーワンを誇っている同社だが、ECへの本格進出は2012年に「ワタシプラス(watashi+)」をローンチして以降と、ECというジャンルにおいてはライバルたちに若干出遅れた形であった。このワタシプラスの立ち上げから関わっている徳丸さんは、当時を振り返って次のように語る。

「当時は、ふたつの大きな課題がありました。ひとつめは、資生堂がこれまで注力してきたマス宣伝がだんだんと効かなくなり、コミュニケーションの比重がウェブに移行してきたこと。ウェブ上のシェア・オブ・ボイス(広告量の割合)を高めていく必要が出てきたのです。また、資生堂には既存の得意先との関係や、これまでカウンセリングをしながらしっかりと対面で商品の価値を伝え、お客さまの要望を聞きながら販売してきた文化があります。その文化が、ECという販売チャネルに踏み出しにくい障壁となっていました」

 上記の課題を解決するために、EC事業を基軸としたさまざまなアプローチを考えていた徳丸さん。その中で見えてきた「資生堂がECサイトを立ち上げる意味」は、決して、インターネットで商品を購入できるという販売チャネルの新設にとどまらないものだったという。

「ECの本質は、無店舗で商品を販売できることではなく、資生堂と生活者のダイレクトなつながりができること。それまで、資生堂には、店舗で獲得した『花椿CLUB』という会員組織があり、当時の会員数は500万人ほど。また、資生堂のネット会員もおよそ100万人いました。これらの会員組織はバラバラに運営されていましたが、それをシングルIDとして統合し、お客さまとダイレクトにコミュニケーションを展開することで、より深い関係を構築できるはず。そこで、ダイレクトCRMの仕組みづくりを始めたんです」

 こうして生み出された、ブランド横断型の会員サイト「ワタシプラス」。ローンチ以降、ウェブ上ではECのトライアルで新規を獲得し、店舗では販売員の協力を得ながらウェブでもポイントが貯まることを訴求するなどして会員登録を促進していった。しかし、年配客も多く、当時はまだガラケーを使用しているユーザーも多かったため、コールセンターでのフォローなども必要だったという。

 また、ECという大きなチャレンジに、社内の理解を得ることも高いハードルとなっていた。

「『リアル店舗とECは競合になってしまう』という現場のイメージが強く、その誤解を解くことに苦労しました。僕らが目指しているのは、リアル店舗の数字を奪うことではなく、お客さまに資生堂のファンになっていただくこと。ウェブを活用することで、ユーザーのLTVがトータルで向上し、ワタシプラスに登録したお客さまの資生堂お買い上げ金額はウェブ、リアルともに向上していく。そういったデータを丁寧に説明しながら、社内の納得や理解を得ていきました」

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この記事の著者

萩原 雄太(ハギワラユウタ)

演出家・劇作家・フリーライターとして活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/6485 2019/09/13 12:26

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