変化するEC、ビジネス。FinTechの老舗・PayPalも変わる
――曽根さんがPayPalに入社した2013年から3年間、日本のECの変化をどのように見ていますか?
3つあると考えています。ひとつは「新しいビジネスモデルが増えてきた」こと。ふたつめが、そうしたビジネスの影響を受け、「大手企業も新しい付加価値を提供し始めている」こと。最後に、あらゆる企業が「自分のフィールドを超えて新しいことに挑戦し始めている」ことです。
まず、「新しいビジネスモデルが増えてきた」についてですが、メルカリさんを代表するCtoCのマーケットや、物販のECではないですがクラウドソーシングのような、従来と違う形で人と人をつなぐビジネスモデルがここ数年で急成長しているなと感じています。ECにフォーカスすると、BASEさんやSTORES.jpのような、誰でも簡単にEコマースを始められるビジネスが急成長していて、「国民総EC販売者」が可能になるような環境になってきています。
次の「大手企業も新しい付加価値を提供し始めている」「自分のフィールドを超えて新しいことに挑戦し始めている」については、2013年のYahoo!ショッピングの無料化に始まり、楽天さんもフリマアプリ「ラクマ」や、新しいポイントアップキャンペーンを始めたりしていますよね。Amazonさんも、ID決済の「Amazonログイン&ペイメント」を始めるなど、自社のこれまでのビジネスの範疇を超えたところで、新しいビジネスを展開されていますよね。
こうした変化を促進する基盤として「モバイル」があると考えていますが、消費者側の利用形態の変化に下支えされながら、大手企業も変化して、新しい付加価値を提供し始めているのでしょう。
――Amazonログイン&ペイメントについては、ID決済という点でPayPalと競合するのではと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
ID決済自体がまだそれほど浸透していないので、競合ではなく一緒に盛り上げていければという考えです。どちらも採用されている事業者さんにお話を聞いても、「どちらかを導入したら済むわけではなく、両方あれば、どちらもそれぞれコンバージョンに貢献する」とおっしゃいます。違いとしてPayPalの場合は、販売者として得たお金を消費者として利用する際に、銀行口座に移したりせず、PayPalのアカウントに留めたまま行うことができます。これができるか否かは、法令的に適応されている業種の違いです。
Amazonログイン&ペイメントは、Amazonさんが自社のサイトで抱えているコンシューマーの基盤があるため、導入すると短期的な売上アップにつながるでしょう。PayPalは決済だけをやってきた老舗企業ですから、長期的な視点でお役に立てると思います。
――海外のユーザーには、どのように利用されているのでしょうか。
インバウンド観光客の決済には、旅前・旅中・旅後と3つのステージがあり、それぞれPayPalの活用シーンが異なります。旅前なら、宿泊施設の予約や移動機関の事前決済。旅中では、「座禅」や「日本料理を作ってみよう」といった、アクティビティの購入にご利用いただいています。旅後では、帰国後の越境ECがありますよね。