PayPalを壊すかも?新たなサービスを買収し、発展を続ける
――今後の成長戦略として、オムニチャネル、オフラインのほうへチャネルを増やしていく、という展望も出ていました。
そうですね。2020年には東京オリンピックも開催され、インバウンド観光客のさらなる増加が想定されます。消費者の利便性を考慮すると、日本の事業者側が抱える解決のために、PayPalができることはまだあると思います。オムニチャネル、オフラインのマーケットが賑やかになってきているのは肌で感じているので、PayPalが提供できる付加価値があると確信できるタイミングがきたら、そういったことも考えていきたいと思っています。
――海外ではすでに展開済み、日本ではまだ……というサービスについて、おもしろいものがあればご紹介ください。
いくつかあるのですが、3つ紹介します。まず「Braintree(ブレインツリー)」。「Stripe(ストライプ)」さんのような、簡単なAPIでつなげ、デバイスごと最適なUXでセキュアに決済できる、決済代行プロダクトです。
次に「Venmo(ベンモ)」。P2Pの送受金のプラットフォームで、わかりやすく日本のサービスに例えると「LINE Pay」のようなものです。PayPalでも、個人間送金サービスを提供していますが、Venmoはより若年層にフォーカスし、SNSやMessenger的な視点を加えています。「Xoom(ズーム)」は国際間送金サービスです。たとえば、アメリカからメキシコに送金する際に、従来よりも早く、簡易に送金ができます。
PayPalはそもそも、代引き、銀行振込、コンビニ支払いなどと並列する、決済手段のひとつです。消費者の方はいずれか都合の良いものを選択しますから、すべての決済をPayPalで占めることはできません。ほかの決済オプションも、PayPalを通じて取引を行っていけるようにしたいというのが、これらのサービスを傘下におさめた理由です。
――将来、今の若者が高額な買い物をするようになったときに、私たちが知っている決済手段がピンとこないということもあるんでしょうね。
だんだん、そういうふうになっていくかもしれないですね。私たちの世代は、何か調べようと思ったらGoogleで検索しますが、日本の若者はTwitterやInstagramで検索すると言われていますよね。「Venmo」の場合も、アメリカの若者の間では「Venmoする」というと、送金することを意味するように、ある行動を表す単語にもなってきているほどです。行動が、ジェネレーションによって変わってきている。決済のマーケットも、違うニーズや手段で、今後発展していく可能性が十分にあると考えています。
PayPalは、自らを自らがディストラクト、破壊する。それを進めていこうと考えている会社です。決済手段として並んでいる、PayPalボタンを破壊する可能性のあるBraintreeを買収したのは、自らPayPalボタンを壊していこうという意思表示です。決済、マーケットが変わっていくのをウォッチし、既存のサービスで対応できないのであれば壊し、新しいものをやっていく。これからもそれが続いていくと思います。
――ありがとうございました。